結論:本記事では「Vertex AI Agent Engine完全ガイド」の定義・主要機能・実際の活用方法を、初心者でも理解できる形で体系的に解説します。
対象読者:本テーマに興味がある実務担当者・意思決定者。
読了後にできること:本記事の要点を踏まえて、自社や自分の状況に合わせた次のアクションを判断できます。
perl: warning: Setting locale failed.
perl: warning: Please check that your locale settings:
LANGUAGE = (unset),
LC_ALL = (unset),
LANG = “C.UTF-8”
are supported and installed on your system.
perl: warning: Falling back to the standard locale (“C”).
この記事でわかること
- Google Cloud Next 2026で強化発表されたVertex AI Agent Engineの全機能
- Python SDKを使った本番エージェントのデプロイ手順(コード5本)
- AWS Bedrock AgentCore・Azure AI Foundry・OpenAI Agents SDKとの実用的な比較
- エンタープライズ導入で失敗しないための判断基準
対象読者:AIエージェントを本番環境に展開したい開発者・MLエンジニア・クラウドアーキテクト
「AIエージェントのPoCはうまくいったのに、本番展開になると途端にスケーラビリティとガバナンスの壁にぶつかる」
複数のエンタープライズ向けAIエージェント導入プロジェクトを支援する中で、この相談は繰り返し受けてきました。実験環境でLangChainやADKを動かすのは簡単でも、数百〜数千の同時リクエスト、監査ログ、セキュリティポリシー、マルチエージェント間の認証……これらを全部自前で実装しようとすると、エージェントロジック本体よりインフラコードのほうが多くなってしまいます。
2026年4月22日のGoogle Cloud Next 2026で発表されたVertex AI Agent Engine(Gemini Enterprise Agent Platformの一部として強化)は、この問題に正面から答える基盤です。Production-gradeのマネージド実行環境、A2Aプロトコルによるエージェントネットワークのオーケストレーション、マネージドMCPサーバーによるツール統合、そして200以上のモデルサポート。これらをGoogleの信頼性で提供します。
この記事では、公式ドキュメントと Cloud Next 2026の発表内容をもとに、Vertex AI Agent Engineの全体像から具体的な実装手順、競合比較、法人導入の判断基準まで一気に解説します。コードはそのまま試せる形で5本掲載していますので、今日から手を動かしてみてください。
Vertex AI Agent Engineとは(Cloud Next 2026強化)
Vertex AI Agent EngineはGoogle Cloudが提供するフルマネージドのAIエージェント実行基盤です。もともとVertexプラットフォームの一機能として存在していましたが、2026年4月のCloud Next 2026でGemini Enterprise Agent Platformとして大幅にリブランド・強化されました。
核心を一言で言えば、「エージェントをデプロイすれば、スケーリング・セキュリティ・監視・メモリ管理をGoogleが面倒を見てくれる実行環境」です。従来のAgent Engineの役割(reasoning engineとしてのマネージドランタイム)はそのままに、以下の4層構造で機能が整理されました。
| レイヤー | 主な機能 | GAステータス(2026年4月時点) |
|---|---|---|
| Build | ADK(Agent Developer Kit)、Agent Studio、Agent Registry | GA |
| Scale & Orchestrate | Agent Engine Runtime、A2A Orchestration、Memory Bank、Long-running Agents | GA(一部Preview) |
| Govern | Agent Identity、Agent Gateway、Agent Anomaly Detection | Preview |
| Optimize | Agent Observability、Agent Simulation、Agent Evaluation | GA(一部Preview) |
Cloud Next 2026での主要アップデート
今回の発表で特に注目すべき強化ポイントは以下の4つです。
1. Agent Engine SessionsとMemory Bankの一般提供(GA)
エージェント間でのコンテキスト共有、ユーザーとの会話履歴の永続化が正式GAとなりました。これまでは一時セッションに依存していた状態管理が、スケーラブルなManaged Memory Bankで置き換えられます。
2. マネージドMCPサーバーの統合
Model Context Protocol(MCP)をApigeeと組み合わせたAPI-to-Agentブリッジが利用可能になりました。BigQuery、Google Maps、Cloud Storageなど主要なGoogle CloudサービスがMCPサーバーとして公開されています。
3. A2A Protocol v1.0の本番統合
Agent-to-Agent(A2A)プロトコルがv1.0としてAgent Engineに統合され、エージェント間のタスク委任・マルチエージェントオーケストレーションが標準化されました。2026年4月時点で150以上の組織が本番運用しています(Google Cloud発表)。
4. 200以上のモデルサポート(Model Garden経由)
Geminiファミリーに加え、Anthropic Claude(Opus、Sonnet、Haiku)、Meta Llama、Mistral、その他50以上のサードパーティモデルをModel Garden経由で利用できます。
主要機能詳解(Production Deployment / Monitoring / MCP統合)
Agent Engine Runtime:Production-gradeの実行環境
Agent Engine Runtimeの最大の特徴はサブセカンドのコールドスタートです。Cloud Next 2026では「秒以内のコールドスタート、新規エージェントの数秒以内のプロビジョニング」が謳われており、突発的なトラフィックスパイクにも自動でスケールアウトします。GKEベースのサンドボックスが300インスタンス/秒のデプロイに対応しているとのことです。
実行環境の主な仕様は以下の通りです。
- フレームワーク非依存(LangChain、LangGraph、ADK、カスタムフレームワーク全対応)
- Pythonベース(2026年中にTypeScript/Go/Javaも順次対応予定)
- Google Cloud IAMによる認証・認可
- OpenTelemetry準拠のテレメトリー(Agent Observability)
- Cloud Loggingへの自動ログ出力
Agent Observability:本番監視の仕組み
エージェントの動作をCloud Trace・Cloud Logging・Cloud Monitoringと統合してリアルタイムに可視化できます。トレースはOpenTelemetry準拠で、各ツール呼び出しのレイテンシ、モデルへのリクエスト・レスポンス、エラー率を自動収集します。
Agent Anomaly Detection(Preview)では、ツールの誤用、未認可のデータアクセス、推論の逸脱をプロアクティブに検知し、Security Command Centerから確認できます。
Memory Bank:永続的なエージェントメモリ
Memory BankはCloud Next 2026でGAとなった機能で、エージェントが複数のセッションをまたいでユーザーコンテキストや業務知識を保持できます。Memory Profileという単位で管理され、特定のユーザーやプロジェクトに紐づいた長期記憶を実現します。
Agent Gateway:エアトラフィックコントロール
大規模なマルチエージェント環境での中央ポリシー管理ポイントです。Model Armor(プロンプトインジェクション検知、機密データ漏洩防止、ツールポイズニング検知)を統合しており、エンタープライズのセキュリティ要件に対応します。
セットアップ(Cloud Console / Python SDK / ADK)
ここからはVertex AI Agent Engineを実際に動かす手順を説明します。公式ドキュメントのクイックスタートを基にしています。
前提条件
- Google Cloud プロジェクト(Vertex AI API有効化済み)
- Cloud Storage バケット(ステージング用)
- Python 3.11以上
手順1:APIの有効化とSDKインストール
まず必要なAPIを有効化し、Vertex AI Python SDKをインストールします。
# Google Cloud APIを有効化
gcloud services enable aiplatform.googleapis.com
# Vertex AI SDK(Agent Engineサポート付き)をインストール
pip install --upgrade google-cloud-aiplatform[agent_engines,adk]>=1.112
# ADKのCLIも合わせてインストール
pip install google-adk
動作環境:Python 3.11+、google-cloud-aiplatform 1.112以上
手順2:SDKの初期化
プロジェクト、リージョン、ステージング用GCSバケットを指定してSDKを初期化します。
import vertexai
# 注意: PROJECT_ID、LOCATION、GCS_BUCKETは実際の値に置き換えてください
vertexai.init(
project="your-project-id", # Google CloudプロジェクトID
location="us-central1", # 利用可能リージョン(asia-northeast1も対応)
staging_bucket="gs://your-bucket" # アーティファクトのステージング先
)
print("Vertex AI SDK initialized.")
ポイント:`location`は現在 `us-central1` と `europe-west4` が主に推奨されています。東京リージョン(`asia-northeast1`)でも利用可能ですが、一部機能が遅れてGAになるケースがあるため、最新の可用性は公式ドキュメントで確認してください。
実装サンプル(Pythonコード5本)
コード1:ADKエージェントの定義
ADK(Agent Developer Kit)を使ってエージェントを定義します。ここではGoogle検索ツールを使うシンプルな調査エージェントを例にします。
from google.adk.agents import Agent
from google.adk.tools import google_search
# エージェント定義
# 注意: modelはModel GardenのモデルIDを指定します
research_agent = Agent(
name="research_assistant",
model="gemini-2.0-flash", # または "claude-3-5-sonnet@20241022" 等
instruction="""
あなたは技術調査の専門家です。
ユーザーの質問に対してGoogle検索で最新情報を確認し、
日本語で簡潔かつ正確に回答してください。
情報源URLを必ず記載してください。
""",
description="Web検索を使って最新技術情報を調査するエージェント",
tools=[google_search]
)
print(f"Agent defined: {research_agent.name}")
ポイント:
- `model`パラメータにはGeminiモデルだけでなく、Model Garden経由でClaudeやLlamaも指定可能
- `instruction`は明確かつ具体的に書くほど精度が上がります
- `tools`リストに複数ツールを並べてマルチツールエージェントを構成できます
コード2:Agent Engineへのデプロイ
定義したエージェントをVertex AI Agent Engineにデプロイします。`AdkApp`でラップしてから`agent_engines.create()`を呼びます。
from vertexai import agent_engines
# ADKエージェントをAdkAppにラップ
app = agent_engines.AdkApp(agent=research_agent)
# Agent Engineにデプロイ(初回は数分かかります)
print("Deploying agent to Vertex AI Agent Engine...")
remote_agent = agent_engines.create(
agent=app,
config={
"requirements": [
"google-cloud-aiplatform[agent_engines,adk]>=1.112",
"google-adk>=0.5.0",
],
"staging_bucket": "gs://your-bucket",
"display_name": "Research Assistant",
}
)
print(f"Deployed! Resource name: {remote_agent.resource_name}")
# 出力例: projects/123456/locations/us-central1/reasoningEngines/789012
# 注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。
ポイント:
- `remote_agent.resource_name` を保存しておくと、後でエージェントを参照できます
- デプロイはコンテナイメージのビルドを含むため、初回は5〜10分程度かかります
- `requirements`はプロダクションの依存関係を正確に指定してください(バージョンピン推奨)
コード3:デプロイ済みエージェントへのクエリ
デプロイ後のエージェントにセッションを作成してクエリを送ります。
from vertexai import agent_engines
# 既存のデプロイ済みエージェントを参照
remote_agent = agent_engines.get("projects/123456/locations/us-central1/reasoningEngines/789012")
# セッションを作成(Memory BankやSession管理に紐づく)
session = remote_agent.create_session(user_id="user-001")
print(f"Session created: {session['id']}")
# クエリを送信してレスポンスを受け取る
response = remote_agent.stream_query(
user_id="user-001",
session_id=session["id"],
message="Vertex AI Agent Engineの最新アップデートについて教えてください"
)
# ストリーミングレスポンスを表示
for chunk in response:
if "text" in chunk:
print(chunk["text"], end="", flush=True)
print() # 改行
# 注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。
コード4:MCPサーバーとのツール統合
マネージドMCPサーバーをエージェントのツールとして登録する方法です。ここではBigQueryのMCPサーバーを例にします。
from google.adk.agents import Agent
from google.adk.tools.mcp_tool import MCPToolset, SseServerParams
# BigQuery MCPサーバーへの接続設定
# 注意: MCPサーバーのURLは環境に合わせて設定してください
bigquery_mcp = MCPToolset(
connection_params=SseServerParams(
url="https://mcp.googleapis.com/bigquery",
headers={
"Authorization": f"Bearer {get_access_token()}", # Google OAuth2トークン
}
)
)
# MCPツールを使ったデータ分析エージェント
data_analyst = Agent(
name="data_analyst",
model="gemini-2.0-flash",
instruction="""
BigQueryのデータを分析してユーザーの質問に答えてください。
SQLクエリを自動生成し、実行結果を日本語で説明してください。
""",
tools=[bigquery_mcp] # MCPサーバーをツールとして登録
)
# 注意: MCPツールの権限設定は最小権限の原則に従ってください。
# 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。
ポイント:
- MCPツールはAgent Gatewayでポリシーベースのアクセスコントロールをかけることができます
- Google Cloud Services(BigQuery、Maps、Storage等)は公式MCPサーバーが提供されています
- サードパーティMCPサーバーも接続可能で、Apigeeがブリッジとして機能します
コード5:A2Aプロトコルによるマルチエージェント連携
A2A(Agent-to-Agent)プロトコルを使って、別のエージェントにタスクを委任する実装例です。
from google.adk.agents import Agent
from google.adk.tools.agent_tool import AgentTool
# サブエージェント(専門エージェント)を定義
translation_agent = Agent(
name="translation_specialist",
model="gemini-2.0-flash",
instruction="高精度な日英翻訳を提供する専門エージェントです。",
)
# オーケストレーターエージェント(A2Aで翻訳エージェントに委任)
orchestrator = Agent(
name="orchestrator",
model="gemini-2.0-flash",
instruction="""
ユーザーのリクエストを分析し、必要に応じて専門エージェントにタスクを委任してください。
翻訳が必要な場合はtranslation_specialistに依頼してください。
""",
tools=[
# A2AプロトコルでサブエージェントをToolとして登録
AgentTool(agent=translation_agent)
]
)
# オーケストレーターをAgent Engineにデプロイ
# サブエージェントはオーケストレーターと同じランタイムで実行されます
from vertexai import agent_engines
app = agent_engines.AdkApp(agent=orchestrator)
multi_agent_system = agent_engines.create(
agent=app,
config={
"requirements": ["google-cloud-aiplatform[agent_engines,adk]>=1.112"],
"staging_bucket": "gs://your-bucket",
}
)
print(f"Multi-agent system deployed: {multi_agent_system.resource_name}")
# 注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。
ポイント:
- A2AプロトコルはLinux Foundationに寄贈済みのオープン標準で、他ベンダーのエージェントとも連携可能
- ComplexパターンとDeterministicパターンを混在させて、コンプライアンスが必要なフローは決定論的に実行できます
- Agent Gatewayがエージェント間通信のポリシー適用ポイントになります
料金体系(リクエスト課金 / コンピュート / Monitoring)
Vertex AI Agent Engineの料金は複数のコンポーネントから構成されています。2026年1月28日よりAgent Engineの追加サービスの課金が開始されました(公式ドキュメントより)。
| コンポーネント | 課金モデル | 備考 |
|---|---|---|
| モデル使用料 | トークン単価(モデルによる) | Gemini 2.0 Flash: $0.10/100万トークン(入力)等。Model Gardenで各モデルの単価を確認 |
| Agent Engine Runtime | リクエスト数 + コンピュート時間 | 2026年1月より課金開始。詳細はcloud.google.com/vertex-ai/pricingで確認 |
| Memory Bank | ストレージ容量 + 読み書き操作 | Cloud Spannerベース。詳細は公式ページ参照 |
| Agent Sessions | セッション数 | 一定量の無料枠あり(詳細は公式ページ参照) |
| Managed MCP | API呼び出し数 | Apigee課金と統合 |
正直にお伝えすると、料金の具体的な計算式は利用パターンによって大きく異なります。Google CloudのPricing Calculatorを使って、想定リクエスト数・モデル・セッション数を入力してシミュレーションすることを推奨します。また、Committed Use Discounts(CUD)でコンピュートコストを最大57%削減できるケースもあります。
競合比較(Bedrock AgentCore / Azure Foundry / OpenAI Agents SDK)
エンタープライズAIエージェント基盤の主要4プラットフォームを、実際の導入選定で重要な観点から比較します。
| 観点 | Vertex AI Agent Engine | AWS Bedrock AgentCore | Azure AI Foundry Agents | OpenAI Agents SDK |
|---|---|---|---|---|
| 提供開始 | 2024年〜(Cloud Next 2026で強化) | 2025年10月GA | 2025年12月〜 | 2025年3月〜 |
| マネージド度 | ★★★★★ フルマネージド | ★★★★☆ ほぼマネージド | ★★★★☆ ほぼマネージド | ★★☆☆☆ SDK(インフラ自前) |
| モデル選択 | 200+ (Gemini/Claude/Llama他) | 多数 (Claude/Titan/Llama他) | 多数 (GPT/Llama/Mistral他) | OpenAIモデル中心 |
| マルチエージェント | A2A Protocol v1.0 (GA) | Multi-agent collaboration (GA) | Microsoft Agent Framework | Handoffs (SDK) |
| MCP対応 | あり(Apigeeブリッジ) | あり | あり | あり(SDK連携) |
| エンタープライズガバナンス | ★★★★★ Agent Identity/Gateway | ★★★★☆ IAM/CloudWatch | ★★★★☆ Entra ID統合 | ★★★☆☆ 基本的なトレース |
| 永続メモリ | Memory Bank (GA) | DynamoDBベース (GA) | Thread永続化 | 手動実装 |
| GCP依存度 | 高い(GCPネイティブ) | 高い(AWSネイティブ) | 高い(Azure/M365統合) | 低い(クラウド非依存) |
| 最適な用途 | GCPネイティブ環境、マルチモデル | AWSネイティブ環境 | Microsoft 365統合 | モデル非依存の柔軟な実装 |
AWS Bedrock AgentCoreとの最大の違いはガバナンス層の充実度です。Agent Gateway、Agent Identity(暗号学的ID)、Agent Anomaly Detectionという3層のセキュリティ機構はVertex AI Agent Engineが現時点で最も体系的に整備しています。Azure AI Foundry AgentsはMicrosoft 365(SharePoint、Teams)との統合が強みで、エンタープライズの既存資産を活かしたい場合に優位です。OpenAI Agents SDKはクラウドを選ばない柔軟性が特徴ですが、スケーリングやガバナンスは自前実装が必要です。
なお、AWS Strands Agentsについては AWS Strands Agents&Bedrock AgentCore完全ガイドで、OpenAI Agents SDKについてはOpenAI Agents SDKマルチエージェント完全ガイドでそれぞれ詳しく解説しています。
法人導入の判断基準
Vertex AI Agent Engineが「最適な選択肢」になる条件と、そうでない条件を整理します。
Vertex AI Agent Engineが向いているケース
- すでにGCPを使っている:BigQuery、Cloud Run、Vertex AI Model Gardenとの統合コストが最も低い
- マルチモデル戦略を取る:Gemini/Claude/Llamaを用途別に切り替えたい場合、Model Gardenのマルチモデルアクセスが便利
- エンタープライズガバナンスが最優先:Agent Identity・Agent Gatewayによる監査・ポリシー管理が必要な規制業種(金融・医療・公共)
- マルチエージェントアーキテクチャを本番運用する:A2Aプロトコルによる標準化された連携が必要
- Google Workspace統合:Gemini Enterprise Appのエージェント機能とシームレスに連携したい
他の選択肢を検討すべきケース
- AWSがメインクラウドで移行コストを避けたい:Bedrock AgentCoreのほうがIAM・CloudWatch統合が優位
- Microsoft 365への深い統合が必要:SharePoint・Teamsとのエージェント連携はAzure AI Foundryが最も充実
- クラウド非依存のポータビリティが必要:OpenAI Agents SDKはマルチクラウド・オンプレミス環境でも動作
- GPT-4oが中心モデルで変更予定がない:Azure AI FoundryがOpenAIモデルの本番SLAを提供
導入前に確認すべき3点
- コンプライアンス要件:データレジデンシー(日本リージョン対応確認)、SOC 2/ISO 27001認証の範囲
- 既存フレームワーク資産:LangChain/LangGraphで書いたコードはそのままAgent Engineにデプロイ可能
- PoC→本番のコスト試算:Pricing CalculatorでPoCの10〜100倍のリクエスト数でコストシミュレーション
【要注意】エンタープライズ導入でよくある失敗パターン
失敗1:PoCの環境をそのまま本番に持ち込む
❌ ローカルで動いたADKエージェントをコードそのままAgent Engineにデプロイしようとする
⭕ 依存パッケージのバージョンをrequirements.txtでピン留め、ステージング環境で先に検証してから本番デプロイ
なぜこれが重要か:Agent Engineのコンテナビルドはローカルの仮想環境と微妙に異なります。パッケージバージョンの差異でインポートエラーが発生するケースが多いです。
失敗2:Agent GatewayなしでマルチエージェントをPublicエンドポイントに公開する
❌ A2A連携エージェントを認証なしでPublicに公開
⭕ Agent GatewayでIAM認証を設定し、エージェント間通信にもサービスアカウントを使う
なぜこれが重要か:エージェントが外部ツールを呼び出す権限を持つ場合、プロンプトインジェクション攻撃でツールが悪用されるリスクがあります。Agent GatewayのModel Armorは必須設定です。
失敗3:Memory Bankのデータ設計を後回しにする
❌ とりあえずエージェントをデプロイしてから、「セッションをまたいだ記憶が必要だ」と気づいてリファクタリング
⭕ Memory ProfileとUser IDの設計をアーキテクチャ段階で決定し、最初からMemory Bankを組み込む
なぜこれが重要か:Memory Bankを後から追加すると、既存セッションデータのマイグレーションと、エージェントロジックの修正が同時に発生します。最初から設計に含めることで手戻りを防げます。
FAQ
Q: 既存のLangChainエージェントはそのままVertex AI Agent Engineで動きますか?
A: はい、動作します。LangChainとLangGraphはAgent Engineが公式サポートするフレームワークです。`pip install google-cloud-aiplatform[agent_engines,langchain]`でインストールし、LangChainエージェントを`agent_engines.LangchainAgent`でラップするだけでデプロイできます。
Q: A2AプロトコルはGCP外のエージェント(AWS上のBedrockエージェント等)と通信できますか?
A: はい、可能です。A2AプロトコルはLinux Foundationが管理するオープン標準(HTTPSベース)で、GCPに限定されません。相手エージェントがA2Aプロトコルを実装していれば、クラウドをまたいだ連携が可能です。2026年4月時点で150以上の組織が本番運用中(Google Cloud発表)です。
Q: 日本リージョン(asia-northeast1)でVertex AI Agent Engineは使えますか?
A: 利用可能です。ただし一部の新機能(AgentプレビューGA機能等)は米国・欧州リージョンから先にロールアウトされる場合があります。データレジデンシーが必要な場合は`asia-northeast1`を指定し、使いたい機能の可用性を公式ドキュメントで都度確認することをお勧めします。
Q: Vertex AI Agent EngineとVertex AI Agent Builder(Dialogflow CX)は何が違いますか?
A: Agent BuilderはVertex AIのプラットフォーム全体(Agent Engine、Agent Studio、Dialogflow CX、Agent Registryを含む)の総称です。Agent Engine(Reasoning Engine)はその中でも「カスタムコードのエージェントをデプロイ・実行するマネージドランタイム」という位置づけです。Dialogflow CXはコンバーサショナルAI向けのノーコード/ローコードビルダー、Agent StudioはGUI操作でエージェントを組み立てる機能です。
Q: モデルをGemini以外(Claude、Llama)に切り替えるのは難しいですか?
A: ADKを使っている場合は`model`パラメータを変更するだけです。`”gemini-2.0-flash”` → `”claude-3-5-sonnet@20241022″`(Model Garden経由)のように変更できます。ただしモデルによってプロンプトの最適なスタイルが異なるため、切り替えのあとはプロンプトの調整が必要になるケースがほとんどです。
まとめ:今日から始める3つのアクション
Vertex AI Agent Engineは「エージェントを書く」から「エージェントを本番で運用する」への橋渡しを最も体系的に解決するプラットフォームです。Cloud Next 2026での強化により、Memory Bank GA・A2A v1.0・マネージドMCP・Agent Gatewayが揃い、エンタープライズが求めるガバナンス要件を満たしつつスケールする基盤になりました。
- 今日やること:コード1〜2のADKエージェント定義とデプロイをGoogle Cloud Free Trialで試してみてください(初回は無料枠で十分)
- 今週中:既存のLangChainエージェントがある場合はAgent Engineへの移行POCを1本実施。Pricing Calculatorで本番コストを試算する
- 今月中:PoC結果をもとにBedrock AgentCore・Azure AI Foundryとの選定を完了させ、本番アーキテクチャの設計を固める
この記事を読んで導入イメージが固まってきた方へ
UravationではAIエージェント導入の研修・コンサルを行っています。Vertex AI Agent Engineの要件整理から本番アーキテクチャ設計まで、実際のプロジェクト支援も対応しています。
参考・出典
- Welcome to Google Cloud Next ’26 — Google Cloud Blog(参照日: 2026-04-30)
- Quickstart: Develop and deploy agents on Vertex AI Agent Engine — Google Cloud Documentation(参照日: 2026-04-30)
- Overview of Agent Development Kit (ADK) — Google Cloud Documentation(参照日: 2026-04-30)
- Google Cloud Next 2026: AI agents, A2A protocol, Workspace Studio — The Next Web(参照日: 2026-04-30)
- Enterprise AI Platform: Vertex vs Bedrock vs Foundry (2026) — Internative(参照日: 2026-04-30)
- Getting Started with Agent2Agent (A2A) Protocol — Google Codelabs(参照日: 2026-04-30)
著者:佐藤傑(さとう・すぐる)
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