AIエージェント開発

Anthropic Citations API実装完全ガイド2026

Anthropic Citations API実装完全ガイド2026

この記事の結論

Anthropic Citations APIの実装方法をPDF・Vision・RAG置き換えまで完全解説。cited_text/document_index/page_numberの活用法とHallucination削減効果を実例で紹介。

「Claudeが生成した回答、どこまで信じていいのか分からない」「社内ナレッジを使ったRAGを組んだら、出典が曖昧で結局二度手間になっている」――AIエージェントを本番投入するときに必ずぶつかる壁が、この「出典の不確かさ」です。LLMの回答にハルシネーションが混ざる以上、回答の根拠を一文ずつ追跡できないと、社内利用も顧客向けプロダクトもスケールしません。

Anthropicが提供する Citations API は、この問題を「モデルの後処理」ではなく「モデルの一次出力」として解決します。Claudeが回答を生成するたびに、参照元のドキュメントID・引用テキスト・ページ番号を構造化データで返してくれるため、開発者は引用整形のロジックを自前で書く必要がなくなり、ユーザー側はカーソルを当てた瞬間に「ここがこのPDFの何ページから来たのか」を確認できます。

この記事では、Citations APIの仕様を一次ソース(docs.anthropic.com / Anthropic公式ブログ)ベースで読み解きながら、実装コード・Vision Citations・RAG置き換え・Hallucination削減の効果・ChatGPT Cite機能との違いまで、運用に必要な観点を一気通貫で整理します。AIエージェントに本物の「引用力」を載せたい開発者向けの完全ガイドです。

この記事の要点

  • Citations APIは cited_text / document_index / start_char_index / page_number を構造化で返す
  • テキスト・PDF・カスタムコンテンツ・Visionの4モードに対応(公式docs)
  • Anthropic内部検証では「参照精度が約15%向上、ハルシネーション系の誤回答が削減」と報告
  • 引用テキストは入力トークン課金、出力トークンには加算されない(コスト設計に効く)
  • OpenAI ChatGPTの引用機能は検索エンジン直結型、AnthropicはAPIで開発者が制御できる点が決定的に違う

Citations APIとは何か:1分で構造を理解する

Citations APIは、2025年1月にAnthropicが正式公開した「ドキュメントベース引用」を組み込んだChat Completion機能です。Claudeに対してPDFやテキストドキュメントを documents パラメータとして渡し、 citations: { enabled: true } を有効にすると、モデルが回答の中で参照した部分を cited_text(引用された原文)document_index(どのドキュメントか)start_char_index / end_char_index(文字位置)、PDFなら start_page_number / end_page_number として返してくれます。

これまで多くのチームは、RAG(検索拡張生成)の出力に対して「LangChainやLlamaIndexで強引にcitationを抽出する」「正規表現でURLや[1]を拾う」といったハック的処理を入れていました。Citations APIはそれを モデルの一次レスポンスとしてネイティブに提供する ため、後処理のフラジリティ(壊れやすさ)が根本から消えます。

Anthropic公式が定義する4つの入力モード

公式docs(docs.anthropic.com/en/docs/build-with-claude/citations)によれば、Citations APIは次の4種類の source タイプをサポートします。

  • text:プレーンテキスト。最もシンプルで、社内ドキュメントを生のstring化して投入する場合に使う
  • base64 PDF:PDFをbase64エンコードしてそのまま渡す。ページ番号を含む引用が返る
  • custom_content:ドキュメントを「ブロック単位」に自分で分割して渡す。チャンク単位の引用が欲しいRAGに有効
  • Visual document(Vision Citations):画像PDFやスキャン文書からもページ番号付き引用を返す(2025年後半に拡張)

すべての source には任意で titlecontext を付けられます。 title は引用表示で使う「ファイル名」、 context はモデルが引用判断するときの追加情報(例:「これは2024年Q4の決算資料」)として機能します。

レスポンス構造のリアル

Citations APIのレスポンスは、テキストブロックの中に citations 配列が混在するシンプルな構造です。公式docsに掲載されている形を抜粋・整形すると次のようになります。

{
  "content": [
    {
      "type": "text",
      "text": "2024年の売上高は前年比18%増の",
      "citations": null
    },
    {
      "type": "text",
      "text": "2,450億円となりました。",
      "citations": [
        {
          "type": "char_location",
          "cited_text": "売上高は2,450億円(前年比+18.0%)",
          "document_index": 0,
          "document_title": "FY2024_決算短信.pdf",
          "start_char_index": 1284,
          "end_char_index": 1308
        }
      ]
    }
  ]
}

ポイントは、 引用文(cited_text)は丸ごと文字列として返ってくる ことと、 1つの回答文に複数の引用がぶら下がる場合は配列で複数件返る ことです。フロントエンドはこれをそのままハイライト表示・トランジションの起点として使えます。

なぜ「Citations」が今、AIエージェントの最重要機能なのか

2024年までのRAGは、「ベクトルDBで検索して文章を渡してClaude/GPTに要約させる」までで止まっていました。しかし2025年以降、エージェントが 業務オペレーション に入り込んだ瞬間に、「その回答の根拠を提示してください」という監査要件が必ず発生します。法務・経理・医療・金融はもちろん、社内ヘルプデスクですら「この情報、どのドキュメントに書いてあるの?」を即時に出せないと運用が止まります。

Hallucination問題の本質:根拠の不在

Hallucination(幻覚=LLMがもっともらしい嘘を生成する現象)は、モデルの賢さで完全に消すのは難しい問題です。しかし「回答の文ごとに参照元を結びつけられる」状態にすれば、ユーザーが 自分で検証可能 になります。Anthropicは公式ブログ(2025年1月のCitations発表記事)で、内部テストにおいてCitations機能を使った場合に「ドキュメント参照の精度がベースラインより約15%向上した」と報告しています。

これは「Claudeが嘘をつかなくなる」のではなく、 「嘘か本当かを人間が即座に判断できる」UXに変わる ことが本質的な変化です。AIエージェントを社内導入する際、リスク部門が止めにかかる最大の理由が「根拠が辿れない」ことだとすれば、Citations APIはそのブロッカーを正面から外しにいく機能と言えます。

関連記事:ハルシネーション対策の全体像

引用機能はハルシネーション削減の重要な一手ですが、それ単体では完璧ではありません。プロンプト設計・出力検証・サブエージェント分離など、複数の技術を組み合わせる必要があります。AIエージェントのハルシネーションを多層防御で抑える具体策については、AIエージェント Hallucination対策 7テクニック実装ガイド で詳しく解説しています。

実装:5分で動くCitations APIサンプル(Python)

最小構成の実装を見ていきます。Python SDK(anthropic 0.40+)を前提に、まずはテキストドキュメントから始めます。

import anthropic

client = anthropic.Anthropic()

response = client.messages.create(
    model="claude-sonnet-4-5",
    max_tokens=1024,
    messages=[
        {
            "role": "user",
            "content": [
                {
                    "type": "document",
                    "source": {
                        "type": "text",
                        "media_type": "text/plain",
                        "data": "弊社の2024年売上高は2,450億円で、前年比18%増となった。営業利益は340億円で過去最高。EBITDAマージンは22.8%まで改善した。"
                    },
                    "title": "FY2024_業績サマリ.txt",
                    "citations": {"enabled": True}
                },
                {
                    "type": "text",
                    "text": "2024年の業績ハイライトを3点教えてください。"
                }
            ]
        }
    ]
)

for block in response.content:
    if block.type == "text":
        print(block.text)
        if block.citations:
            for cite in block.citations:
                print(f"  └ 引用: {cite.cited_text} (文字位置 {cite.start_char_index}-{cite.end_char_index})")

このコードを実行すると、各回答文に紐付いた引用が文字位置付きで取得できます。「2,450億円」と書いた直後に、その根拠となった原文と位置が返ってくる――これが citations.enabled = True の挙動です。

PDFを直接渡す:base64 PDFモード

業務シーンで最も使うのはPDF引用です。社内マニュアル・契約書・決算資料・論文――いずれもPDFが標準フォーマットです。Citations APIはPDFをbase64で受け取り、ページ番号付きで引用を返します。

import anthropic
import base64

client = anthropic.Anthropic()

with open("manual.pdf", "rb") as f:
    pdf_data = base64.standard_b64encode(f.read()).decode("utf-8")

response = client.messages.create(
    model="claude-sonnet-4-5",
    max_tokens=2048,
    messages=[
        {
            "role": "user",
            "content": [
                {
                    "type": "document",
                    "source": {
                        "type": "base64",
                        "media_type": "application/pdf",
                        "data": pdf_data
                    },
                    "title": "業務マニュアルv3.2.pdf",
                    "citations": {"enabled": True}
                },
                {
                    "type": "text",
                    "text": "経費精算の上限ルールを教えてください。"
                }
            ]
        }
    ]
)

for block in response.content:
    if block.type == "text" and block.citations:
        for cite in block.citations:
            page = f"p.{cite.start_page_number}"
            if cite.end_page_number != cite.start_page_number:
                page += f"-{cite.end_page_number}"
            print(f"[{page}] {cite.cited_text}")

PDFモードでは start_page_number / end_page_number が返ってくるので、フロントエンドで「マニュアルp.12を開く」というジャンプを実装できます。社内ヘルプデスクボットでよく要望が出る「該当ページを直接開きたい」が、ここで成立します。

関連記事:Files APIとの組み合わせで大規模PDFを扱う

20MBを超えるPDFや、複数のPDFを横断する場合は、Citations単体ではなく Files API と組み合わせるのが定石です。一度Files APIにアップロードしておけば、複数の会話・複数のエージェントから同じドキュメントを参照でき、base64の毎回エンコードコストもゼロになります。Files APIの詳細仕様と運用設計は、Anthropic Files API 完全実装ガイド を参照してください。

Vision Citations:スキャンPDFと画像から引用する

2025年後半にAnthropicが追加したのが Vision Citations です。テキストレイヤーがないスキャンPDF・写真として取り込まれた契約書・手書きが混ざる文書――これまでOCRをかけてからRAGに入れるしかなかったドキュメント群が、CitationsのままClaudeから直接扱えるようになりました。

Visionモードの仕組み

Vision CitationsはClaude 3.5 Sonnet以降のマルチモーダル機能を内部で使い、画像PDFの各ページを画像として認識した上で、テキスト引用と同じインターフェースで cited_textstart_page_number を返します。開発者から見ると テキストPDFと同じコードでスキャンPDFも扱える のが最大の利点です。

# テキストPDFと完全に同じインターフェース
# Claudeが内部でOCR的処理+ページ番号付与を行う
response = client.messages.create(
    model="claude-sonnet-4-5",
    max_tokens=2048,
    messages=[
        {
            "role": "user",
            "content": [
                {
                    "type": "document",
                    "source": {
                        "type": "base64",
                        "media_type": "application/pdf",
                        "data": scanned_pdf_base64
                    },
                    "title": "1995年版_設備管理マニュアル.pdf",
                    "citations": {"enabled": True}
                },
                {
                    "type": "text",
                    "text": "ボイラーの年次点検頻度はどう指定されていますか。"
                }
            ]
        }
    ]
)

業務PDFの相当割合は実は スキャン物 です。製造業の品質マニュアル、医療機関のガイドライン、行政の通達――OCRエンジンを別途調達し、その精度を維持し続けるコストは無視できません。Vision Citationsはそのレイヤーをモデル側に押し込んでくれる、運用観点で非常に大きな変化です。

Vision Citationsの注意点

  • 解像度が低い画像PDFは精度が落ちる:fax由来や古い複合機スキャンは要注意。300dpi以上を推奨
  • 表組み・複雑なレイアウトはまだベータ品質:金額表は隣セルと混じることがある。重要数字は人間検証ループを残す
  • トークン消費が大きい:画像PDFはテキストPDFより数倍のトークンを消費する。コスト試算は早めに

custom_contentモード:RAGとの最強コンビ

「PDF丸ごと渡しは現実的じゃない、自分で関連チャンクを検索した上でCitationsを使いたい」――このユースケースに応えるのが custom_content モードです。

response = client.messages.create(
    model="claude-sonnet-4-5",
    max_tokens=1024,
    messages=[
        {
            "role": "user",
            "content": [
                {
                    "type": "document",
                    "source": {
                        "type": "content",
                        "content": [
                            {"type": "text", "text": "チャンク1:返金ポリシーの基本条項..."},
                            {"type": "text", "text": "チャンク2:例外条項として、開封済み商品は..."},
                            {"type": "text", "text": "チャンク3:返金期限は購入後30日以内..."}
                        ]
                    },
                    "title": "返金ポリシー(関連チャンク抜粋)",
                    "citations": {"enabled": True}
                },
                {
                    "type": "text",
                    "text": "開封済み商品の返金は可能ですか?"
                }
            ]
        }
    ]
)

このモードでは、 引用は「何番目のチャンクか」というブロックインデックス で返ります。自前のベクトル検索で取得した上位10チャンクを渡し、その中からClaudeが「実際に答えに使った」チャンクだけを正確にフィードバックしてくれる――これはRAGの再評価・チャンキング戦略の改善に直結します。

RAGのチューニングループに使える

custom_contentモードを本番運用に組み込むと、「ベクトル検索でtop-10取った中で、実際にCitations APIが引用したのは2-3個だけ」というデータが蓄積されます。これは 検索精度のSignal として極めて価値が高く、「無駄に上位に来てしまったチャンクを下げる」「引用されやすいチャンクをハイライト学習する」など、再帰的なチューニングが可能になります。

RAGそのもののパターン設計、特にAgentic RAGとの相性については Agentic RAG 4パターン比較ガイド に整理しています。Citations APIは「Self-Reflective RAG」「Plan-and-Execute RAG」のいずれとも組み合わせ可能で、特にSelf-Reflectiveパターンでは 引用元の数 を品質判定シグナルとして使う設計が有効です。

料金設計:引用テキストは入力扱い、これがコストに効く

Citations APIの料金構造は、公式docsで明確に定義されています。ポイントを抜き出すと次の通りです。

  • ドキュメント自体は入力トークンとして課金(通常の入力トークン単価)
  • cited_textも入力トークン扱い(出力トークンに加算されない)
  • 出力トークンには本文(モデルが生成したテキスト)だけ加算
  • プロンプトキャッシュ対応:同じドキュメントを繰り返し使う場合、キャッシュヒットで大幅にコスト削減

注目すべきは「 cited_textが出力に課金されない 」点です。仮にClaudeが回答中に長い原文を引用した場合でも、その引用部分は出力トークン課金の対象外。引用が増えても出力コストが膨張しない設計になっています。

コスト試算(社内ヘルプデスク想定)

仮に 50ページ・約30,000トークンの社内マニュアル を毎回参照させる場合:

  • 初回:30,000 input tokens(フルロード)
  • 2回目以降:プロンプトキャッシュヒットで 約10分の1の単価
  • 1日100クエリ運用なら、月間のドキュメント課金は数千円〜1万円台に収まる試算

「PDFを毎回投げるのはコストが怖い」というのは2024年時点の懸念で、2025年以降は Files API + プロンプトキャッシュ + Citations の三点セットで現実的な金額に収まります。長文PDFの常時参照を諦めかけていたチームこそ、いま再評価する価値があります。

ChatGPT Citeとの比較:API主導か検索エンジン主導か

OpenAIも引用機能を提供していますが、設計思想がAnthropicと根本的に異なります。両者を正しく理解しておくと、プロダクト選定の判断軸が明確になります。

比較表

観点 Anthropic Citations API ChatGPT Cite(OpenAI)
引用ソース 開発者が渡すドキュメント Web検索結果(OpenAI内蔵検索)
引用粒度 文字位置・ページ番号レベル URL単位
主な用途 社内ドキュメント・自社データのRAG 最新Web情報の参照付き要約
開発者の制御度 高(ドキュメント・モード選択可) 中(検索の中身は不透明)
セキュリティ 外部送信なし(API内完結) Web検索が走るため社外問い合わせが発生
価格モデル トークン課金+キャッシュ最適化 検索回数依存

使い分けの結論

結論はシンプルです。 「外部の最新Web情報を取りに行きたい」ならChatGPT Cite、「社内PDFや自社データから根拠付き回答を作りたい」ならAnthropic Citations 。両者は競合というより役割分担で、エージェント設計上は 両方を組み込む のがベストプラクティスになりつつあります。実装としては、ユーザーの質問が社内系か外部系かをルーターLLMで分岐させ、それぞれの引用APIを呼び分ける構成です。

社内ナレッジRAGの代替設計:Citations単体で組めるか

「VectorDB+LangChain+自前citation抽出」という従来構成を、Citations APIだけで置き換えられるのか――答えは YESとNOの両方 です。

YES:小〜中規模社内ヘルプデスクなら単体で行ける

ドキュメント数が数十〜数百本程度で、各ドキュメントが数十ページ規模なら、Files APIにアップロードしておきCitations付きで都度参照する設計がシンプルで強力です。ベクトルDBの運用コスト・チャンキング戦略・埋め込みモデル更新といった保守項目がすべて消えるため、 「LLMネイティブな社内ヘルプデスク」 として運用負荷が劇的に下がります。

NO:数千ドキュメント規模・横断検索が必須なら依然RAGが要る

ドキュメント本数が千を超え、ユーザーがどのドキュメントを引きたいか事前に絞れない場合は、 ベクトル検索によるピックアップ が依然必要です。この場合は前述の custom_content モードで、「検索で絞ったtop-Kチャンクを渡してCitations付きで生成させる」設計に倒すのが定石です。Agentic RAGの中で「retrieval phase」と「synthesis phase」を分離し、後者にCitations APIを使う形ですね。

移行判断フローチャート

  1. ドキュメント数が 500本未満 か? → YESならCitations単体構成を試す
  2. ユーザーが 事前にドキュメントを指定できる か? → YESならCitations単体で十分
  3. 1ドキュメントあたり 100ページ以上 あるか? → YESなら chunk + custom_content モードへ
  4. 横断検索・複合質問が頻発するか? → YESなら Vector RAG + custom_content の併用

Hallucination削減の現実的な効果

Citations APIは「ハルシネーションをなくす機能」ではありません。あくまで「ハルシネーションを 検出可能にする 機能」です。ここを誤解すると過大評価になります。

削減効果が大きいタイプ

  • 引用ソースが明確な質問:「マニュアルにはどう書かれているか」型は劇的に改善
  • 数値・固有名詞の引用:金額・日付・人名などの誤生成はCitations経由で検証しやすい
  • 複数文書を跨ぐ要約:どのドキュメントから何を取ってきたかが明示されるため、誤統合の検出が容易

削減効果が小さいタイプ

  • ドキュメントに明示されていない推論:「これからどうなりますか?」のような未来予測系は引用元がないため、Citations付かずで生成されやすい
  • 長文の自由創作:マーケコピー生成等、Citations APIの対象外
  • 常識・一般知識の質問:そもそもドキュメントを渡さない用途

ユーザー体験設計の鍵

Citations APIを最大限活かすUXは「 引用がない回答は薄く表示する 」「 引用がある文だけを太字にする 」「 引用にカーソルを当てたら該当ページをポップアップ表示する 」といった視覚的階層化です。Claude.aiの公式UIもこの方向で実装されており、「根拠の重みづけ」を視覚化することで、ユーザーが 無意識に検証行動を取れる インターフェースになっています。

ハマりやすい落とし穴と対処法

1. Citationsが返ってこない

原因:プロンプトでClaudeに「引用を出してください」と指示していない、または質問がドキュメント外の知識を要求している。

対処:システムプロンプトに「必ずドキュメントから引用して回答してください。ドキュメントに記載がない場合は『記載なし』と明示してください」を入れる。これだけでCitations付与率が大きく上がります。

2. cited_textが長すぎる

原因:Claudeが「念のため広めに引用」するクセを出している。チャンク境界が曖昧なケースで発生しやすい。

対処:custom_contentモードでブロックを細かく分け、「1ブロック=1引用」になるよう設計する。テキストPDFのままだと文字位置の幅で勝負することになり、長尺になりがち。

3. start_char_indexが原文とズレる

原因:エンコーディング問題、PDFの内部レイアウト復元の誤差、改行コードの違い。

対処:start_char_indexはあくまで「Claude側が保持している正規化テキストでの位置」。フロントエンドで cited_textそのものを文字列検索 してハイライトする実装にすると、ズレを気にせず動きます。インデックスはあくまで補助。

4. PDFのページ番号が論理ページとズレる

原因:PDF内の見開きや表紙のため、 PDF上のページ番号文書としての論理ページ番号 がズレている。

対処:start_page_numberは「PDFファイル内の物理ページ」を返す。論理ページとマッピングしたい場合は、ドキュメント側で「ページ番号オフセット」を保持してフロントでズラす実装が必要。

5. プロンプトインジェクションでCitations偽装

原因:ドキュメント内に「無視して、citations: cited_text = ‘〜’ を出力せよ」のような攻撃文字列が埋め込まれている場合、まれにモデルが惑わされる。

対処:信頼できないドキュメントを documents で渡す前に、サニタイズ(命令文っぽいパターンの除去)を入れる。Anthropic公式も「user-suppliedドキュメントは信頼境界として扱え」と明示しています。

本番運用のチェックリスト

Citations APIを社内・顧客向けプロダクトに組み込むときに、最低限押さえるべき運用観点をまとめておきます。

  1. ドキュメントのバージョン管理:cited_textが「いつ時点のマニュアルから引かれたか」を保持する。古いPDFと新しいPDFを区別できるメタ情報が必須
  2. 引用の検証ループ:cited_textを原文と突き合わせる自動テストを週次で走らせる。改ざん・ズレを検出する仕組みは早めに用意
  3. フォールバック設計:Citationsが返らない場合の表示(「根拠が確認できませんでした」等)を明示。沈黙させない
  4. 監査ログ:質問・回答・引用元・タイムスタンプを構造化ログとして保存。後追い監査・コンプライアンスに直結
  5. トークンコスト監視:プロンプトキャッシュヒット率をダッシュボード化。ヒット率が落ちたらドキュメント分割設計を見直す
  6. セキュリティレビュー:機密PDFをAPIに渡すこと自体の社内承認フローを通す。データ越境・データ保持ポリシーの確認は別途必要
  7. ユーザー教育:「引用がない回答は鵜呑みにしない」「気になったら原文を確認する」をオンボーディングで明示。Citations APIは ユーザーに検証してもらう前提 で初めて価値が出る

2026年のロードマップ:Citationsはこの先どこへ向かうか

2025年1月の正式公開から1年強、Anthropicはこの機能に継続的に手を入れ続けています。一次ソースを追う限り、今後の方向性は次のように見えます。

  • 動画・音声引用:タイムスタンプ付きで「動画の◯分◯秒〜」を引用する機能の実験的言及がブログで観測される
  • マルチターン引用継続:会話を続けても引用情報が継承される設計の強化
  • Citationsベースの自己評価:モデル自身が「自分の回答に十分な引用が付いているか」を判定するメタ機能
  • エコシステム拡大:MCP(Model Context Protocol)経由でのCitations受け渡し標準化の動き

特に MCPとの統合 は注視に値します。MCPサーバ側で取得したドキュメントが、自動的にCitations対応のままClaudeに渡る設計が成熟すれば、社内ナレッジエージェントの構築コストはさらに一段下がります。AIエージェント開発者にとって、Citations APIは「単なる引用機能」ではなく「 エージェントの信頼性レイヤー 」として中核に座る機能になるはずです。

まとめ:Citations APIで「証拠付きAI」が標準になる

本記事を通じて見てきたように、Anthropic Citations APIはAIエージェントに 「根拠の透明性」 をネイティブに与える機能です。重要なポイントを最後に再整理します。

  • Citations APIは text / base64 PDF / custom_content / Vision の4モードに対応
  • レスポンスには cited_text / document_index / 文字位置 / ページ番号 が構造化で返る
  • cited_textは入力トークン扱い、出力課金の膨張がない設計
  • プロンプトキャッシュ+Files APIとの組み合わせで現実的なコストで本番運用可能
  • ChatGPT Citeとは住み分け(社内データ vs 外部Web)。両方を併用するのが2026年の定石
  • RAGを完全に代替するわけではなく、 RAGの「synthesisフェーズ」を強化する のが正しい位置づけ
  • Hallucinationを「ゼロにする」のではなく「検出可能にする」機能であることを正しく理解する

「AIエージェントを業務に入れたいが、根拠の不在で止まっている」――そんな状態のチームは、まずCitations APIで最小プロトタイプを組んでみることを強く推奨します。本記事で紹介した5分実装のコードから始めれば、その日のうちに「証拠付きAI」の手触りが体験できるはずです。

この記事を読んで導入イメージが固まってきた方へ

UravationではAIエージェント導入の研修・コンサルティングを提供しています。Citations APIを含むAnthropic APIの本番運用、社内ナレッジRAGの設計、開発組織へのAIエージェント実装支援まで一気通貫でサポート可能です。お気軽にお問い合わせください。

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執筆:佐藤傑(さとう・すぐる)。株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。著書『AIエージェント仕事術』。本記事はAnthropic公式ドキュメント・公式ブログを一次ソースとして執筆しています。仕様は変更される可能性があるため、本番実装前に最新のdocs.anthropic.comを確認してください。

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※ 本記事の情報は2026年5月時点のものです。サービスの料金・仕様は変更される可能性があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。

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