結論:Flowise AgentFlow V2は外部フレームワーク依存を排除したネイティブ設計で、マルチエージェントのノーコード構築を根本から変えた。
- 要点1:14種のネイティブノードにより、LangChainなしでSupervisor/Workerパターンをキャンバス上で組める
- 要点2:Flow Stateによるノード間データ共有と、Human-in-the-loopの標準搭載でステートフルなワークフローが実現
- 要点3:Difyと比較してメモリ消費量が大幅に少なく、RAM 1GBのVPSでも動作する軽量設計
対象読者:ノーコード/ローコードでAIエージェントを構築したい開発者・PM・技術担当者
今日やること:npm install -g flowiseui を実行してローカル起動し、AgentFlow V2のキャンバスを触ってみる
「Flowiseは試したことあるけど、AgentFlow V2に切り替えていいのか判断できない」
検証環境でV1とV2を比べてみた結果、設計思想がかなり異なることが分かりました。V1はLangChainやLangGraphのコンポーネントをUIで扱う「ラッパー」という性格が強かったのに対し、V2はFlowise自身がネイティブノードを提供する「独立したオーケストレーター」として設計されています。
この記事では、AgentFlow V2の14種ノード仕様、Supervisor/Workerマルチエージェントの実装手順、Difyとの用途別比較を、公式ドキュメントとGitHub情報をもとに整理します。Flowise v3.1.2(2026年4月14日リリース)時点の情報です。
結論ファースト:用途別おすすめ早見表
| 用途・状況 | おすすめ | 理由 | 料金目安(セルフホスト) |
|---|---|---|---|
| RAGチャットボットを最速で動かしたい | Flowise | 軽量・すぐ起動・ノーコード | 無料(インフラのみ) |
| マルチエージェントをビジュアルで設計したい | Flowise AgentFlow V2 | 14ノードで柔軟なフロー構築 | 無料(インフラのみ) |
| チーム複数人で本番RAGを管理したい | Dify | ユーザー管理・ワークスペース完備 | RAM 4GB以上のサーバーが必要 |
| ワークフロー自動化と組み合わせたい | n8n + Flowise | n8n MCP連携でトリガーを柔軟に設定 | 各インフラコストによる |
| LLMアプリの高度なモニタリングが必要 | Dify | ノード単位の実行ログ・トークン消費を可視化 | RAM 4GB以上のサーバーが必要 |
料金情報の最終確認: 2026-06-11。最新は各公式サイトで確認してください。
Flowiseとは何か — GitHubスター5万3,000超のOSS
Flowiseは「ビジュアルキャンバスでAIエージェントを構築する」オープンソースプラットフォームです。Node.jsで動作し、LangChain・LlamaIndexのコンポーネントをドラッグ&ドロップで組み合わせられます。
2026年6月時点でGitHubスター数は5万3,500以上(フォーク2万4,500以上)。最新の安定バージョンはv3.1.2(2026年4月14日リリース)です。
セルフホスト版は完全無料で使えます。クラウド版はFree(月0ドル・2フロー・月100予測)、Starter(月35ドル・無制限フロー・月1万予測)、Pro(月65ドル・月5万予測)の3プランが用意されています(2026年5月時点)。
セルフホストで起動する(3ステップ)
以下はローカル環境での起動手順です。Node.js 18以上が必要です。
# Node.js 18以上がインストール済みであることを確認
node --version
# npmでFlowiseをグローバルインストール
npm install -g flowise
# 起動(デフォルトでポート3000)
npx flowise start
動作環境:Node.js 18以上、npm 8以上。
アクセス:http://localhost:3000 でダッシュボードが開きます。
注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。本番ではデータベースの永続化設定(SQLiteまたはPostgreSQL)を行うことを推奨します。
AgentFlow V2 — アーキテクチャ変更の本質
V2が「根本的な変化」と呼ばれる理由は、外部フレームワーク依存の排除にあります。
V1とV2の設計思想の違い
| 項目 | AgentFlow V1(廃止予定) | AgentFlow V2(現行) |
|---|---|---|
| 基盤アーキテクチャ | LangChain/LangGraph依存 | Floise独自ネイティブノード |
| ノード設計 | 外部ライブラリのラッパー | 独立した専用コンポーネント |
| フロー制御 | フレームワーク任せ | 明示的な接続・実行キュー |
| データ共有 | ノード間連携が複雑 | Flow Stateで統一管理 |
| Human-in-the-loop | 標準サポートなし | Human Input Node標準搭載 |
| マルチエージェント | Sequential/Multi-Agents(LangGraph依存) | Agent Node + Supervisor構成 |
公式ドキュメントでは「V1はDeprecating(廃止予定)」と明記されており、新規構築はV2を使うことが推奨されています。
実行キューとノード依存関係
V2では各ノードが「独立したユニット」として動作します。ノード間の接続がそのまま実行順序を定義するため、コードを書かなくても実行フローが視覚的に明確になります。複数の接続パスがある場合は、依存関係に基づいた実行キューが自動で管理されます。
14種のネイティブノード — 役割と使い分け
V2のキャンバスで使えるノードは以下の14種類です(公式ドキュメントより)。
| ノード名 | 役割 | 主な使い所 |
|---|---|---|
| Start Node | ワークフローの入口・Flow State初期化 | 全フロー共通(必須) |
| LLM Node | LLMを直接実行(ツール選択なし) | テキスト生成・要約・翻訳 |
| Agent Node | 自律的な推論とツール選択 | 調査・検索・API連携を含むタスク |
| Tool Node | 特定ツールの決定的実行 | 常に同じ処理を実行したい場合 |
| Retriever Node | ドキュメントストアから情報検索 | RAGパイプライン |
| HTTP Node | 外部API連携 | REST APIコール・Webhook送信 |
| Condition Node | ルールベースの条件分岐 | スコア閾値・フラグ判定 |
| Condition Agent Node | AI駆動型の動的分岐 | 文章の意図・感情に応じた分岐 |
| Iteration Node | 配列要素に対するループ処理 | リスト内の複数アイテムを順次処理 |
| Loop Node | 前のノードへの後退実行 | 品質チェック通過まで繰り返す処理 |
| Human Input Node | ユーザー入力の要求(実行一時停止) | 承認フロー・確認ステップ |
| Direct Reply Node | 最終応答を返して終了 | 回答生成後の終端 |
| Custom Function Node | JavaScriptコードを実行 | データ変換・カスタムロジック |
| Execute Flow Node | 別ワークフローを呼び出し | サブフローの再利用 |
Flow State:ノード間データ共有の仕組み
V2のFlow Stateは「実行時のキー・バリューストア」です。Start Nodeで初期変数を初期化し、後続ノードから読み書きできます。
// Start Nodeでの Flow State 初期化(設定画面のイメージ)
{
"flow_state": {
"research_result": "",
"confidence_score": 0,
"approved": false
}
}
後続ノードでの参照は {{ $flow.state.research_result }} という構文で行います。条件分岐(Condition Node)の判定条件にも使えるため、エージェント間でデータを受け渡す際に便利です。
Supervisor/Workerマルチエージェントを構築する
AgentFlow V2の最大の特徴が、Supervisor/Workerパターンのビジュアル構築です。Supervisorエージェントがタスクを判断・委譲し、複数のWorkerエージェントが並行して実行する構成を、コードなしに設計できます。
基本的な構成イメージ(擬似コード)
# マルチエージェント構成のフロー定義イメージ(YAML表現)
flow:
- Start Node:
flow_state:
task: ""
result_web: ""
result_doc: ""
- Agent Node (Supervisor):
model: gpt-4o
role: "タスクを分解し、Web調査とドキュメント検索の2つのWorkerに委譲する"
outputs:
- to: Agent Node (Worker A)
- to: Agent Node (Worker B)
- Agent Node (Worker A - Web調査):
tools: [Web Search Tool]
output_state_key: result_web
- Agent Node (Worker B - ドキュメント検索):
tools: [Retriever Node]
output_state_key: result_doc
- LLM Node (集約):
input: "{{ $flow.state.result_web }} + {{ $flow.state.result_doc }}"
role: "2つの結果を統合して最終回答を生成する"
- Direct Reply Node
実際のキャンバス操作では、各ノードをパレットからドラッグして配置し、アウトプットポートとインプットポートを線で繋ぐだけです。
ステップバイステップ構築手順
以下の手順でSupervisor/Workerフローを構築できます。
# 手順1: Flowiseを起動してAgentFlow V2を選択
npx flowise start
# ブラウザで http://localhost:3000 を開く
# 「+ Add New」→「AgentFlow V2」を選択
- Start Nodeを配置: キャンバス左上にドラッグ。「Flow State」タブで初期変数(research_result, confidence等)を設定する。
- Supervisor Agent Nodeを追加: Start Nodeの右に配置し、使用するLLM(GPT-4o、Claude 3.7 Sonnetなど)を選択。ロールプロンプトでSupervisorとしての振る舞いを定義する。
- Worker Agent Nodeを2つ追加: SupervisorのアウトプットポートからWorker A・Worker Bへ線を引く。各Workerに必要なツール(Web検索、Retriever等)を設定。
- 集約用LLM Nodeを配置: 両WorkerのアウトプットをLLM Nodeに接続。プロンプトで「2つの入力を統合して回答生成」と指示。
- Direct Reply Nodeで終端: LLM Nodeの出力をDirect Reply Nodeに接続して完成。
Human-in-the-loopの組み込み方
承認フローが必要な場合は、Supervisor Nodeと集約LLMの間にHuman Input Nodeを挿入します。
// Human Input Nodeの設定イメージ(JavaScriptでのAPI連携確認用)
// 実際の設定はFlowise UIのノード設定画面から行います
const humanInputConfig = {
message: "調査結果を確認してください。処理を続けますか?",
// ユーザーの選択肢(yes/no)に応じて異なるパスに分岐
options: ["承認して続行", "中止"],
timeout: 3600 // 秒(1時間)
};
// チェックポイントが保存されるため、
// アプリ再起動後も同じポイントから再開可能
ポイント:Human Input Nodeは実行スレッドをブロックせずに待機します。ユーザーが応答するまでチェックポイントが保存されるため、長時間のワークフローでも途中から再開できます。
よくある失敗パターンと回避策
失敗1:Flow Stateの初期化を忘れる
❌ Start Nodeで変数を未定義のまま後続ノードから参照しようとする
⭕ Start Nodeの「Flow State」タブで使用する全キーを宣言してから構築を始める
なぜ重要か:未定義キーへのアクセスはノードエラーになり、フロー全体が停止します。先に型と初期値を定義する習慣が重要です。
失敗2:SupervisorにWorkerを接続せずにデプロイする
❌ Agent NodeをSupervisorとして設定したが、Workerへの接続線を引いていない
⭕ キャンバスで接続を視覚的に確認してからテスト実行する
なぜ重要か:接続なしのSupervisorは単独のエージェントとして動作するため、委譲パターンが機能しません。V2は「明示的な接続」が実行フローを定義するため、線の確認が必須です。
失敗3:LLM NodeとAgent Nodeの使い分けを誤る
❌ ツール使用が不要な要約タスクにAgent Nodeを使う(不要な推論コストが発生)
⭕ ツール選択が必要な場合のみAgent Node、固定処理はLLM Node/Tool Nodeを使う
なぜ重要か:Agent Nodeはツール選択のための追加トークンを消費します。固定処理にはLLM Nodeが適切で、コストと速度を最適化できます。
失敗4:本番でSQLiteのみ使用してデータを失う
❌ デフォルト設定のSQLiteのまま本番運用し、コンテナ再起動でフロー設定が消える
⭕ 本番環境ではPostgreSQLを設定し、外部ストレージとの永続化を確保する
# PostgreSQL接続の環境変数設定例
export DATABASE_TYPE=postgres
export DATABASE_HOST=your-db-host
export DATABASE_PORT=5432
export DATABASE_NAME=flowise
export DATABASE_USER=flowise_user
export DATABASE_PASSWORD=your_password
# Flowiseを起動
npx flowise start
# 注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。
Dify vs Flowise — 用途別選択ガイド
FlowiseとDifyはどちらも「ノーコードでLLMアプリを構築するOSS」ですが、設計思想が異なります。ここでは2026年時点の両者を比較します。
機能比較表
| 項目 | Flowise | Dify |
|---|---|---|
| 言語・フレームワーク | Node.js(TypeScript) | Python + Next.js |
| 最低メモリ要件 | 1GB RAMでも動作 | 4GB RAM推奨(8GB以上を推奨) |
| RAG機能 | 基本的なRetrieverノード | マルチ検索・ハイブリッド・リランク等高度なRAG |
| チーム管理 | シングルインスタンス向け(V1比較) | ユーザーロール・ワークスペース完備 |
| デバッグ機能 | 基本的なログ表示 | ノード単位の実行時間・トークン消費を可視化 |
| マルチエージェント | AgentFlow V2でビジュアル構築 | ワークフローエディタで構築 |
| API公開 | Predictions APIとして自動公開 | API Endpoint管理画面あり |
| セルフホスト難易度 | 低(npx一発起動) | 中(Docker Compose推奨) |
情報の参照先:Flowise公式ドキュメント、Dify vs Flowise 2026(Use Apify)。最終確認: 2026-06-11。
どちらを選ぶか — 3つの判断軸
軸1: チームの規模
個人・小規模チームでの実験的なRAGチャットボット、マルチエージェントプロトタイプには Flowise が適しています。部門横断の複数開発者が並行して作業し、ロール管理が必要な場合は Dify が候補になります。
軸2: インフラの制約
RAM 1GBの小さなVPSやローカルPC(M1/M2 Mac含む)では Flowise が動作します。Dify はRAM 4GB以上のサーバーを推奨しているため、インフラコストがかかります。
軸3: RAG要件の高さ
ドキュメントのカスタムチャンク・ハイブリッド検索・リランキングなど高度なRAGが必要なら Dify の方が機能が充実しています。基本的なドキュメント検索と回答生成で十分なら Flowise のRetriever Nodeで対応できます。
n8n連携でFlowiseを強化する
FlowiseはAPIエンドポイントを自動公開するため、n8nのHTTP Requestノードから呼び出せます。また、MCPサポートも追加されており、外部エージェントからFlowiseのフローをツールとして呼び出すことも可能です。
// n8nからFlowiseの予測APIを呼び出す設定イメージ
// n8nのHTTP Requestノードの設定値
const flowiseApiCall = {
method: "POST",
url: "http://your-flowise-host:3000/api/v1/prediction/YOUR_FLOW_ID",
headers: {
"Authorization": "Bearer YOUR_API_KEY",
"Content-Type": "application/json"
},
body: {
"question": "{{ $json.input_text }}"
}
};
// レスポンス: { "text": "...", "sourceDocuments": [...] }
n8nとの組み合わせについては、n8n MCPでAIエージェントワークフローを構築するガイドも参考になります。
マルチエージェント設計パターンとの接続
AgentFlow V2のSupervisor/Workerパターンは、Orchestrator/Workerパターンの具体的な実装手段のひとつです。より大きな設計観点から整理したい場合は、マルチエージェント設計パターン(Orchestrator/Worker)完全解説を合わせて読むと体系的に理解できます。
参考・出典
- Agentflow V2 | FlowiseAI 公式ドキュメント — FlowiseAI(参照日: 2026-06-11)
- FlowiseAI/Flowise — GitHub — FlowiseAI(参照日: 2026-06-11、v3.1.2)
- Dify vs Flowise: Self-Hosted LLM App Platform Comparison (2026) — Use Apify(参照日: 2026-06-11)
- Flowise 公式サイト — 料金プラン — FlowiseAI(参照日: 2026-06-11)
- Agentflow V1 (Deprecating) | FlowiseAI — FlowiseAI(参照日: 2026-06-11)
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること:
npm install -g flowiseを実行してローカルで起動し、AgentFlow V2のキャンバスでStart Node + Agent Nodeを配置してみる - 今週中:Supervisor/WorkerパターンでシンプルなWebリサーチ + 要約フローを構築し、Flow Stateによるデータ受け渡しを体感する
- 今月中:Human-in-the-loopを組み込んだ承認フローを本番ユースケースに適用し、PostgreSQL永続化を設定して安定運用に移行する
あわせて読みたい:
- DifyでノーコードのAIエージェントを構築するガイド — FlowiseとDifyを実際に比較したい方向け
- マルチエージェント設計パターン(Orchestrator/Worker)完全解説 — 設計レイヤーを体系的に理解したい方向け
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著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人以上。100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書『AIエージェント仕事術』。SoftBank IT連載執筆。
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