AIエージェント入門

Grokマルチエージェント実装ガイド|4/16エージェントの使い分け【2026】

Grokマルチエージェント実装ガイド 16体のエージェント協調

この記事の結論

xAI公式のgrok-4.20-multi-agentで複数のGrokエージェントを協調させる実装ガイド。agent_count 4/16の使い分け、Responses API実装、リーダー統合、コスト設計を公式仕様で解説。

結論:xAIの grok-4.20-multi-agent は、1回のリクエストで複数のGrokエージェントを起動して議論・協調させ、リーダーエージェントが回答を統合して返す「マルチエージェント専用モデル」です。設計の肝は agent_count4(高速・焦点型)か16(深掘り・多面的) で切り替えること、そして Chat Completions APIではなくResponses APIで叩くことの2点。ここを外すと動かないか、トークンを無駄に溶かします。

この記事の要点

  • モデルIDは grok-4.20-multi-agent。マルチエージェントはリーク仕様ではなく xAI公式機能として提供されている
  • エージェント数は agent_count(xAI SDK)または reasoning.effort(OpenAI互換)で指定。4と16の二択で、16は4より大幅にトークンを消費する
  • クライアント独自ツールは使えず、組み込みツール(web_search / x_search / code_execution / collections_search)に限定。max_tokens も現状未対応という制約を前提に設計する

対象読者:Grok APIでリサーチ系・調査系のエージェントを実装したい開発者・PM。
読了後にできることgrok-4.20-multi-agent を最短で呼び出し、4/16の使い分けとコスト・レイテンシのトレードオフを自分のユースケースに当てて判断できる。


そもそも「マルチエージェント」モデルとは何か

通常のLLM呼び出しは「1つのモデルに1つのプロンプトを投げ、1つの応答を受け取る」構造です。これに対して grok-4.20-multi-agent は、1回のリクエストの内部で複数のエージェントが同時に立ち上がり、それぞれが独自の視点・推論・調査結果を持ち寄って議論します。最後に指名されたリーダーエージェントが議論を統合し、最終回答としてユーザーに返す——という多段構成になっています。

ポイントは、開発者から見ると呼び出し自体は1回で済むということです。内部で何体のエージェントが走ろうと、返ってくるのはリーダーのツール呼び出しと最終応答だけ。自前でエージェントをオーケストレーションするコード(各エージェントの起動・状態管理・結果マージ)を書かずに、深いリサーチを1コールに畳み込めるのが価値です。Grok単体のエージェント設計については Grokエージェントモード完全ガイド も合わせて読むと、単一エージェントとの違いがはっきりします。

最短で動かす:grok-4.20-multi-agent の呼び出し

まずは一番小さく動かします。xAI SDKなら、モデルに grok-4.20-multi-agent を指定し、agent_count を渡すだけです。

# xAI SDK — 4エージェントで起動(高速・焦点型)
chat = client.chat.create(
    model="grok-4.20-multi-agent",
    agent_count=4,
)
chat.append(user("競合3社の最新の料金改定をリサーチして比較表にまとめて"))
response = chat.sample()
print(response.content)

agent_count に渡せるのは 4 か 16 の二択です。中間値(8など)は用意されていません。まずは4で挙動を確認し、回答の浅さが気になったら16へ上げる、という順序が無駄がありません。

4エージェント vs 16エージェント — どちらを選ぶか

公式の指針はシンプルで、「4=素早く焦点を絞ったリサーチ」「16=深掘りが必要な複雑・多面的なテーマ」です。ただし16は4より大幅にトークンを消費するため、レイテンシとコストが跳ねます。実装時の判断軸を整理すると次の通りです。

観点 agent_count = 4 agent_count = 16
向くタスク 単一論点の調査、要約、定型リサーチ 多面的な市場調査、複数仮説の検証、横断比較
回答の深さ 必要十分 より網羅的・多視点
トークン消費 少ない 大幅に増える
レイテンシ 短い 長い
使いどころ リアルタイム性が要る画面・大量リクエスト 1件あたりの質が効くレポート生成・意思決定支援

実務的には「ユーザーが待てる秒数」と「1回答あたりに払えるコスト」で先に上限を決め、そのレンジに収まる方を選ぶのが安全です。チャットUIのように待ち時間が短い用途で16を常用すると、体感速度とAPIコストの両方で破綻しやすい。

SDK別:エージェント数の指定方法

同じ4/16でも、使うSDKによって指定するパラメータ名が変わります。ここを取り違えると「指定したつもりが効いていない」事故になります。

SDK / インターフェース 指定方法
xAI SDK agent_count4 または 16
OpenAI互換 SDK / REST reasoning.effort"low"/"medium"=4、"high"/"xhigh"=16)
Vercel AI SDK reasoningEffort

OpenAI互換クライアントを既存資産として持っている場合は、reasoning.effort 経由で叩けます。ここで重要なのが、Chat Completions APIは非対応で、Responses APIを使う点です。

# OpenAI互換クライアント — Responses API + reasoning.effort で16エージェント
resp = client.responses.create(
    model="grok-4.20-multi-agent",
    input="新興EV3社のサプライチェーン戦略を多角的に分析して",
    reasoning={"effort": "high"},   # high / xhigh = 16エージェント
)
print(resp.output_text)

マルチターンの会話を続けたい場合は、自前で履歴を積み直すのではなく previous_response_id で前の応答に連結します。

# 前回の応答に連結してマルチターン化
resp2 = client.responses.create(
    model="grok-4.20-multi-agent",
    input="さっきの分析を、日本市場に絞って深掘りして",
    reasoning={"effort": "high"},
    previous_response_id=resp.id,
)
print(resp2.output_text)

【要注意】実装でハマる4つの制約

マルチエージェントモデルは通常のチャットモデルと前提が違います。先に潰しておくべき制約はこの4つです。

❌ Chat Completions APIで叩く → ⭕ Responses API

既存のChat Completions向けコードをそのまま流用すると動きません。Chat Completions APIは非対応です。Responses API(responses.create)へ移行してください。

❌ クライアント側の独自ツールを渡す → ⭕ 組み込みツールで設計

自前で定義したfunction callingツールやクライアントサイドツールはサポート外です。使えるのは組み込みの web_search / x_search / code_execution / collections_search に限定されます。独自データへのアクセスが必要なら、collections に載せて collections_search で引く、という設計に寄せます。

❌ max_tokens で出力を絞ろうとする → ⭕ 別の制御に切り替える

max_tokens現状未対応です。出力量の制御を max_tokens 前提で組んでいると効きません。プロンプト側で出力フォーマット・分量を明示する設計に変えます。

❌ サブエージェントの中間状態が素通し → ⭕ use_encrypted_content を有効化

サブエージェントのstate(中間生成物)は、use_encrypted_content を有効にしない限り暗号化されません。機微なデータを扱うエージェントでは、暗号化オプションを明示的にオンにしてから運用に乗せてください。

コストとレイテンシをどう設計するか

マルチエージェントは「賢いが高い」リソースです。フラッグシップの Grok 4.3 は入力 $1.25 / 出力 $2.50(各100万トークン)という料金で、非幻覚率・agentic tool calling・instruction followingでリードするとされています。マルチエージェントは内部で複数体が走る分、同じ問いでも単一モデル比でトークンが膨らみます。

設計のコツは、全リクエストをマルチエージェントに通さないことです。入口で「これは深掘りが要る問いか」を軽量モデルで判定し、要るものだけ grok-4.20-multi-agent の16へ、定型は4へ、それ以外は通常の単一モデルへ振り分ける——という三段ルーティングにすると、品質を落とさずコストを抑えられます。モデルが消えても壊れない設計思想は モデル消失時代のAIエージェント設計 にまとめています。

いつマルチエージェントを使うべきか

判断はユースケース次第です。1論点の調査・要約・分類なら、単一エージェント(あるいは agent_count=4)で十分なことがほとんど。マルチエージェントの16が効くのは、「複数の仮説を並行検証したい」「立場の違う視点を突き合わせたい」「広く浅くではなく広く深く調べたい」といった、人間ならチームを組ませる類のタスクです。Grokを他モデルと比べてどこに置くかは Grok 4 Fast vs Claude 4.8 vs GPT-5 ベンチマーク比較 も参考にしてください。逆に、コスト感度が高い大量リクエストや、ミリ秒単位の応答が要る画面では、マルチエージェントは過剰投資になりがちです。

よくある質問

Q. agent_count に8や32は指定できますか?

いいえ。指定できるのは4と16の二択です。中間値・それ以上の値は用意されていません。

Q. 既存のChat Completionsコードは流用できますか?

できません。grok-4.20-multi-agent はChat Completions API非対応です。Responses APIへ移行してください。

Q. 自社ドキュメントを検索させたい場合は?

クライアント独自ツールは使えないため、collectionsに載せて組み込みの collections_search で引く形に設計します。

まとめ

マルチエージェントは「複数体を協調させる賢さ」を1コールに畳み込める一方で、トークンとレイテンシのコストが明確に乗ります。agent_count の4/16をユースケースで使い分け、Responses APIで叩き、組み込みツール・max_tokens非対応・暗号化の制約を前提に設計する。この型を押さえれば、Grokのマルチエージェントは「深いリサーチを安全に外注できるAPI」として実戦投入できます。まずは agent_count=4 で1コール動かすところから始めてください。

この記事を読んでAIエージェントの導入イメージが固まってきた方へ

Uravationでは、AIエージェントの設計・実装・社内導入の研修とコンサルティングを行っています。自社の業務にどう組み込むかの相談から対応します。


佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。100社以上の企業向けAIエージェント導入・研修を担当。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。

参考・出典

Need help moving from reading to rollout?

この記事を読んで導入イメージが固まってきた方へ

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