AIエージェント入門

Hermes Agentとは何か|自己進化するOSS AIエージェントの全容

Hermes Agentとは何か|自己進化するOSS AIエージェントの全容

この記事の結論

NousResearchが開発したOSS AIエージェント「Hermes Agent」。セッション間で記憶を蓄積し、難問を解くたびに再利用可能なスキルを自動生成する「自己進化」機能を持つ。インストールから自己進化の仕組みまで技術的に解説。

そもそもHermes Agentとは何か

NousResearchが2026年2月に公開したオープンソースの自律AIエージェントだ。

リポジトリの説明文には “The agent that grows with you” とある。使うほど賢くなる、というのが核心コンセプトで、通常のAIエージェントが「毎回ゼロから始める」問題を根本から解決しようとしている。MIT Licenseで公開されており、GitHub Starsは2,200+(2026年3月時点)。2026年3月2日には GitHub Daily Trending 11位に入り、3月12日には初のメジャーリリース v0.2.0 が公開された。

開発元のNousResearchは、Hermes-3 モデルファミリー(オープンソースの高性能LLM)で知られるAI研究チームだ。モデル開発の知見をエージェントに活かし、「自己進化」という機能を実装したのがHermes Agentである。

AIエージェントの基本設計と構築パターンについては、AIエージェント構築完全ガイドで体系的にまとめている。本記事ではHermes Agent固有の「自己進化」「永続メモリ」「Skills Hub」に絞って技術的に解説する。

何が新しいのか

AIエージェントに触れたことがある人なら、「前回の会話を覚えていない」「同じ設定を毎回やり直す」という問題に直面したことがあるはずだ。Hermes Agentはこの問題に3つのアプローチで挑んでいる。

機能 従来のエージェント Hermes Agent
セッション間の記憶 なし(毎回リセット) MEMORY.md + USER.md で永続化
タスク解決の知識 揮発(会話終了で消える) SKILL.md ファイルとして自動保存
スキルの品質向上 なし DSPy + GEPA で自動最適化
モデル提供元 単一API依存が多い Nous Portal / OpenRouter / カスタムエンドポイント対応
チャネル CLI が中心 CLI / Telegram / Discord / Slack / WhatsApp / Signal
スキル数(組み込み) 70+(15+カテゴリ)

正直、「永続メモリを持つエージェント」自体はすでに複数のプロジェクトが試みてきた。Hermes Agentが差別化できているのは、「自己進化モジュール(DSPy + GEPA)」と「Skills Hub によるコミュニティ共有」 の組み合わせだ。この2点については後半で詳しく説明する。

具体的に何ができるようになるのか

インストール(5分でできる)

まず動かしてみよう。インストールはワンラインコマンドで完結する。Linux / macOS / WSL2 対応(Windows ネイティブは非対応)。

# ワンラインインストーラー(Python・Node.js・依存パッケージをすべて自動設定)
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/NousResearch/hermes-agent/main/scripts/install.sh | bash

# シェルのリロード
source ~/.bashrc   # zsh の場合は source ~/.zshrc

# 動作確認
hermes version
hermes doctor  # 依存パッケージと設定を自動チェック

動作環境: Linux / macOS / WSL2, Python 3.11+(インストーラーが自動セットアップ)
注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。

初回セットアップとチャット起動

インストール後はモデルプロバイダーを設定してすぐ使える。

# LLMプロバイダーとモデルを選択(Nous Portal / OpenRouter / カスタムエンドポイント)
hermes model

# ツール設定
hermes tools

# 一括設定(初回はこれが楽)
hermes setup

# チャット開始
hermes

# 前回セッションの続き(永続メモリからコンテキストを復元)
hermes --continue

起動後はスラッシュコマンドでリアルタイムに設定変更できる。/tools でツール一覧、/model でモデル切り替え、Alt+Enter で改行入力だ。

永続メモリの仕組み(技術詳細)

Hermes Agent のメモリは ~/.hermes/memories/ に保存される2つのファイルで管理される。

# ~/.hermes/memories/MEMORY.md(容量上限: 2,200文字 ≒ 800トークン)
# エージェント自身のノート
# 環境情報・プロジェクト規約・過去に学んだことを記録

## Environment
- OS: macOS 14.x
- Primary language: Python 3.11
- Project root: ~/projects/my-agent

## Learned
- ユーザーはコード例をコードブロックで出力することを好む
- GitHub PRは1コミット1機能の方針
# ~/.hermes/memories/USER.md(容量上限: 1,375文字 ≒ 500トークン)
# ユーザープロフィール
# 嗜好・コミュニケーションスタイル・期待値を記録

## Preferences
- 説明は箇条書きより段落で
- エラー時は原因→解決策の順で
- 日本語で応答

両ファイルはセッション開始時にシステムプロンプトへ「スナップショット」として注入される。セキュリティ面では、プロンプトインジェクション・クレデンシャル抜き出し・不可視Unicode などのパターンに対するスキャンが入っており、脅威パターンに一致した記憶は自動ブロックされる。

過去の会話を遡りたい場合は FTS5 全文検索が使える。

# 過去のセッション検索(SQLite FTS5)
# ~/.hermes/state.db に全セッションが蓄積される
# チャット中にエージェントが自動で session_search ツールを呼び出す
# または直接クエリも可能

# スラッシュコマンド経由
/search "Pythonのデコレーター"

検索結果はGemini Flashが要約して返す(FTS5の生ヒットではなく、LLMが意味を圧縮してくれる)。

メッセージングゲートウェイの接続

Telegram / Discord / Slack / WhatsApp / Signal に接続すると、普段使いのチャットアプリから同じエージェントを呼び出せる。メモリとスキルはチャネルをまたいで共有される。

# ゲートウェイのセットアップ(例: Telegram)
hermes gateway setup

# セットアップ後、同じ hermes コマンドでチャネルを切り替えて利用

自己進化モジュール(DSPy + GEPA)の仕組み

ここが最も技術的に興味深い部分だ。

hermes-agent-self-evolution は独立したリポジトリ(MIT License)として公開されており、ICLR 2026 Oral として発表されたGEPA(Genetic-Pareto Prompt Evolution)アルゴリズムを採用している。

処理の流れはこうだ:

  1. 現在のスキル / プロンプト / コードを読み込む
  2. 評価用データセットを合成生成する
  3. GEPAオプティマイザーが実行トレースを分析する
  4. 複数の候補バリアントを生成する(テキストの「突然変異」)
  5. 制約ゲート(テスト / サイズ制限 / セマンティック検証)で評価する
  6. 最適バリアントを選択してPRを自動作成する
# hermes-agent-self-evolution のセットアップ
git clone https://github.com/NousResearch/hermes-agent-self-evolution.git
cd hermes-agent-self-evolution
pip install -e ".[dev]"
export HERMES_AGENT_REPO=~/.hermes/hermes-agent

# スキルの進化を実行(例: github-code-review スキルを10イテレーション最適化)
# 注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。
python -m evolution.skills.evolve_skill 
    --skill github-code-review 
    --iterations 10 
    --eval-source synthetic

動作環境: Python 3.11+, DSPy(要pip install)
コスト: 1実行あたり $2〜$10(GPUトレーニング不要、すべてAPIコール)

重要なのは「GPUが不要」という点だ。テキストを突然変異させ、APIで評価し、Paretoフロントで最良のものを選ぶ——これがすべてLLM APIのコールで完結する。自前のGPUクラスタを持たない開発者でも、$5〜$10のAPIコストでスキルを最適化できる。

現在(v0.2.0時点)はPhase 1(スキルファイル最適化)が完了しており、Phase 2以降のツール説明・システムプロンプト・コード進化は計画中だ。

よくある誤解

誤解1: 「自己進化」はモデルをファインチューニングする

そうではない。モデルの重みは変わらない。進化するのは「スキルファイル(プロンプト+手順)」 だ。DSPy + GEPAが最適化するのはテキストであり、LLM自体には手を加えない。モデルはあくまでAPIで呼び出されるだけだ。

誤解2: Skills Hub は Hermes Agent 専用のフォーマット

agentskills.io というオープン標準に準拠した SKILL.md ファイルとして設計されており、他のエージェントでも使い回せる。NousResearch は囲い込まず、コミュニティ共有を明確に意図している。

誤解3: Telegram / Discord への接続にサーバーが必要

ローカルマシンで hermes gateway setup を実行するだけで接続できる。VPSが必要なのは「24時間稼働させたい」場合だ($5/月のVPSで動く)。

【要注意】よくある失敗パターンと回避策

失敗1: MEMORY.md の文字数制限を超えてエントリを詰め込む

❌ 重要なことを全部MEMORY.mdに書こうとする(2,200文字オーバー)
⭕ 「常に必要な重要事実」だけをMEMORY.mdに入れ、「数週間前の会話内容」はセッション検索(FTS5)に任せる

なぜ重要か: MEMORY.md はシステムプロンプトに毎回注入されるため、肥大化するとコンテキストウィンドウを圧迫し、応答品質が下がる。制限は意図的な設計だ。

失敗2: メモリへのプロンプトインジェクションを想定しない

❌ 外部入力(ウェブスクレイピング結果など)を検証なしでメモリに保存させる
⭕ Hermes Agent 自体のスキャン機能を過信せず、外部入力を直接メモリに書かせる指示は避ける

なぜ重要か: メモリはシステムプロンプトに注入される。悪意ある文字列が混入すると、以降のセッション全体が汚染される可能性がある。

失敗3: 自己進化を「常時オン」で動かそうとする

❌ すべてのスキルを毎日 evolve_skill で最適化しようとする
⭕ 実際に頻繁に使うスキルに絞り、評価データが十分たまってから実行する

なぜ重要か: 1実行 $2〜$10のコストが積み上がる。また、評価データが少ない状態での最適化は過学習を起こしやすい。

失敗4: v0.2.0 時点で Phase 2 の機能を期待する

❌ システムプロンプト全体の自己最適化を期待してデプロイする
⭕ 現在の Phase 1(スキルファイル最適化)の範囲を確認してから設計する

なぜ重要か: Phase 2(ツール説明・システムプロンプト・コード進化)は計画段階だ。ロードマップを確認してから本番構成を設計すること。

結局どうすればいいのか

Hermes Agentを使い始めるなら、以下の順番が現実的だ。

今日やること: ワンラインインストーラーで環境を立ち上げ、hermes コマンドで動作確認する。モデルは OpenRouter 経由で Claude 3.5 Sonnet か GPT-4o を指定するのが安定する。

今週中: MEMORY.md と USER.md に自分のプロジェクト規約・作業環境・好みを書き込む。エージェントに「覚えてほしいこと」を明示的に伝えて蓄積させる。Skills Hub(hermes skills search)でワークフローに合うスキルを探してインストールする。

今月中: 実際に使い込んで「この処理を何度もやった」と感じたタイミングで、エージェントにスキル化を依頼する。頻繁に使うスキルが5本以上たまったら hermes-agent-self-evolution のセットアップを検討する。

正直に言うと、Hermes Agent はまだ発展途上だ。v0.2.0 はファースト・タグ付きリリースに過ぎず、Phase 2 の自己進化機能は計画段階にある。ただ、「永続メモリ + スキル自動生成 + コミュニティ共有」という設計思想と、63名・216PR のコントリビューター規模は、1年後に別のプロジェクトになっていても不思議でないポテンシャルを感じさせる。今から触れておく価値はある。

参考・出典


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この記事はAIgent Lab編集部がお届けしました。

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