2026年8月21日時点の結論から書く。GitHub Copilotは2026年8月11日、JetBrains向けIDEで「Ollama」をBYOK(Bring Your Own Key)プロバイダーとして接続できるようにし、同時に「Copilot Memory」機能もJetBrainsに拡張した。設定に必要なのは環境変数2つ、COPILOT_PROVIDER_BASE_URLとCOPILOT_MODELだけで、APIキーの発行や課金設定は不要だ。この記事では、実際に手を動かして設定する手順と、Copilot MemoryがどういうルールでデータをローカルLLM実行時にも保持・破棄するのかを、公式ドキュメントの記述に基づいて解説する。
そもそもBYOKとは何か──GitHub Copilotのモデル選択の仕組み
BYOK(Bring Your Own Key)は、GitHub CopilotのデフォルトルーティングであるGitHub主催のモデル選択をバイパスし、開発者自身が用意したモデルプロバイダーに直接接続する仕組みだ。Copilot CLIは2026年4月7日時点で公開されているGitHub Changelogによると、Azure OpenAI・Anthropic・OpenAI互換エンドポイント・Ollama・vLLM・Foundry Localへの接続に対応していた。今回のアップデートはこの対応範囲をJetBrains系IDE(IntelliJ IDEA、PyCharm、WebStormなど)にまで広げたものだ。Ollama自体の基本的な使い方は別記事で解説している。
Ollamaは「openai」プロバイダータイプに分類される。これはOllamaのAPIがOpenAIのChat Completions APIと互換性を持つためで、vLLMやFoundry Localと同じ枠組みで扱われる。設定の詳細はGitHub公式のBYOKモデル利用ガイドにまとまっている。
2026年8月のアップデートで何が変わったか
GitHub Changelogの2026年8月11日付エントリによると、今回のリリースには2つの変更が含まれている。
- Ollamaプロバイダー対応: JetBrains全体でプロバイダー設定とモデル選択画面からOllamaを選べるようになった
- Copilot Memoryの拡張: 「エージェントチャットセッションをまたいで有用な情報を保持・再利用できる」機能がJetBrainsでも使えるようになった
この2つは別機能だが、組み合わせると「ローカルLLMで動かしながら、プロジェクト固有のルールは記憶させておく」というハイブリッド構成が可能になる。

Ollamaをローカルで起動してBYOKプロバイダーに設定する手順
まずOllama自体をインストールし、モデルを1つ取得しておく。
# Ollamaでモデルを取得(例: llama3.2)
ollama pull llama3.2
# Ollamaのローカルサーバーが起動しているか確認
curl http://localhost:11434/api/tags
次にCopilot CLI側で環境変数を設定してから起動する。公式ドキュメントに記載されている設定はこの2行だけだ。
# ローカルOllamaインスタンスに接続する
export COPILOT_PROVIDER_BASE_URL=http://localhost:11434
export COPILOT_MODEL=llama3.2
# この状態でCopilot CLIを起動するとOllama経由でリクエストが飛ぶ
copilot
Ollamaは認証を使わないため、COPILOT_PROVIDER_API_KEYの設定は不要と明記されている。完全にネットワークを遮断した状態で使いたい場合は、以下のようにオフラインモードを併用する。
# 外部ネットワークへの通信を完全に遮断する
export COPILOT_OFFLINE=true
export COPILOT_PROVIDER_BASE_URL=http://localhost:11434
export COPILOT_MODEL=llama3.2
copilot
モデル選定で見落としがちな2つの要件
公式ドキュメントは、BYOKプロバイダーとして使うモデルに関して2つの技術要件を明記している。見落とすとCopilotのエージェント機能(ファイル編集やコマンド実行)が正しく動かない。
| 要件 | 内容 | 満たさない場合の症状 |
|---|---|---|
| Tool Calling対応 | モデルがツール呼び出し・ストリーミングに対応している必要がある | ファイル編集やコマンド実行などエージェント動作が失敗する |
| コンテキストウィンドウ | 128kトークン以上を推奨 | 大きめのリポジトリでコンテキストが途中で切れる |
Ollamaで配布されているモデルの中には、Tool Callingに未対応の軽量モデルも多い。BYOK接続前に、使いたいモデルのモデルカードで tools タグの有無を確認しておくと手戻りが少ない。

Copilot Memoryの仕組み──28日ルールと2種類のデータ
BYOKでローカルLLMに切り替えても、Copilot Memoryの挙動自体は変わらない。公式ドキュメントによると、Copilot Memoryは「ステートレスAIとは異なり、コードベースについての理解を保持する」設計思想で作られており、記憶するデータは2種類に分かれる。
| 種類 | 内容 | アクセス範囲 |
|---|---|---|
| Repository-level facts | コーディング慣行、アーキテクチャの判断、ビルドコマンド、プロジェクト固有のルール | そのリポジトリへのアクセス権を持つ全員 |
| User-level preferences | 個人のコーディングスタイルやワークフロー | 本人のみ(Business/Enterpriseは管理者が監視・削除可能) |
保存されたfactやpreferenceは、28日間検証・使用されないと自動的に削除される。Copilotが該当の記憶を実際に検証・使用するたびに、この28日タイマーはリセットされる。Repository-level factsは「引用元コードを参照して検証される」仕組みのため、コードが変わって記憶が古くなった場合は自動的に無効化される設計になっている。詳細な仕様はGitHub公式のCopilot Memory解説ページで確認できる。

Copilot Memoryは現在パブリックプレビュー扱いで、有料の個人プランまたは組織側で許可されたプランではデフォルトで有効になっている。無効化したい場合はCopilot設定の「Features」からいつでもオフにできる。
実務で使いどころを見極める──BYOK×Memoryが刺さる場面、刺さらない場面
Ollama BYOKとCopilot Memoryの組み合わせは万能ではない。向き不向きを整理しておく。
- 向いている場面: エアギャップ環境(社内ネットワークが外部と遮断された開発環境)でのコーディング支援、契約中のクラウドLLM費用を抑えたい検証フェーズ、機微なコードをクラウドに一切送りたくない案件
- 向いていない場面: 大規模リポジトリでの複雑なリファクタリング(ローカルモデルの推論品質・速度がボトルネックになりやすい)、チーム全体でのRepository-level facts共有を前提にした運用(ローカルモデルの応答揺らぎでfactの検証精度が落ちる可能性がある)
実運用では、日常の軽いコード補完・ドキュメント生成はOllama BYOKに寄せ、大きな設計判断やマルチファイル編集はクラウドのフロンティアモデルに戻す、というハイブリッド運用が現実的な落としどころになる。GitHub Copilotはこの数ヶ月でAgent SkillsとMCPのGA化、CLIのworktree対応と、周辺機能を立て続けに拡張しており、BYOKもその一連の「開発者が自分の環境に合わせて調整できる余地を広げる」路線の一部と見るのが妥当だ。
よくある質問
Q. BYOKでOllamaに接続すると、Copilotの料金は安くなりますか?
A. Copilot自体のサブスクリプション料金は変わらない。BYOKはあくまで「モデルの実行先」を切り替える仕組みで、Ollamaで動かしている間はGitHub側の従量課金対象のリクエストが発生しない、という意味でコスト管理がしやすくなる。
Q. Ollama以外にBYOKで使えるプロバイダーはありますか?
A. 公式ドキュメントでは「openai」プロバイダータイプとしてOpenAI・vLLM・Foundry Localなど、OpenAI Chat Completions API互換のエンドポイント全般が対象になっている。Copilot CLIでは2026年4月時点でAzure OpenAIやAnthropicへの直接接続にも対応している。
Q. Copilot Memoryはローカル環境にも保存されますか?
A. 公式ドキュメントの記載を見る限り、Repository-level factsとUser-level preferencesはGitHub側のCopilot基盤で管理される機能であり、BYOKでモデルの実行先をローカルに切り替えても記憶データ自体の保存場所が変わるわけではない。データの保存場所やポリシーの詳細を厳密に確認したい場合は、GitHubの公式ドキュメントを直接参照してほしい。
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