AIエージェント入門

Bedrock Agents Classic新規停止とAgentCore移行

Bedrock Agents ClassicからAgentCoreへの移行を示すイメージ

この記事の結論

Amazon Bedrock Agents Classicは2026年7月30日に新規アカウント利用を停止。既存エージェントへの影響、AgentCoreとの機能対応表、CLI移行手順、料金差分をAWS公式情報から整理する。

2026年7月30日、Amazon Bedrock Agents(2023年11月ローンチ)が「Amazon Bedrock Agents Classic」に改称され、新規アカウントでの利用受付を停止した。既存アカウントは影響を受けないが、これから新しくAIエージェントをBedrock上に構築するチームは、後継の「Amazon Bedrock AgentCore」を使うことになる。

この記事はニュース速報ではなく、AWS公式ドキュメントのFAQ・移行手順・料金ページを1つずつ突き合わせて整理した実務ガイドだ。「自分のアカウントは影響を受けるのか」「今すぐ移行が必要なのか」「料金はどう変わるのか」という、開発者が最初に知りたい疑問に順番に答えていく。AWS以外の選択肢も含めたAIエージェント構築ツール全体の見取り図はAIエージェントツール完全比較12選を参照してほしい。

何が起きたのか — Bedrock Agents Classicの新規受付停止

AWS公式ドキュメントによると、変更点は以下の通りだ。

日付 出来事
2023年11月 Amazon Bedrock Agentsが一般提供開始
2026年4月末 Amazon Bedrock AgentCoreが一般提供開始
2026年7月30日 Bedrock Agentsが「Bedrock Agents Classic」に改称され、メンテナンスモードへ移行。新規アカウントでの利用受付を停止

「メンテナンスモード」の内容は、AWS公式FAQで次のように説明されている。過去12ヶ月以内にBedrock Agentsの利用実績があるアカウントは自動的に「allowlist」され、これまで通りCreateAgentやInvokeInlineAgentを含む全APIを使い続けられる。一方、利用実績のない新規アカウントがCreateAgentやInvokeInlineAgentを呼び出すと、次のエラーが返る。

Error Code: AccessDeniedException (HTTP 403)
Message: "Bedrock Agents is in Maintenance Mode. New agent creation is
not available for accounts without prior service usage."

誤解しやすいポイントとして、これは「サービス終了」ではない。既存エージェントの実行系API(GetAgent、ListAgents、DeleteAgent、PrepareAgent、InvokeAgent、アクショングループAPI、ナレッジベースAPI、エイリアスAPIなど)は、allowlistアカウントであれば全て引き続き利用できる。CloudFormation・CDK・Terraformの既存テンプレートも変更なく動作する。

自分のアカウントは影響を受けるのか

判定基準はシンプルだ。「過去12ヶ月以内にBedrock Agentsを使った実績があるAWSアカウントか」だけで決まる。

  • 既存ユーザー:直近12ヶ月以内にBedrock Agentsの利用履歴があれば、そのアカウントは自動でallowlistされ、今まで通り新規エージェントも作成できる
  • 新規ユーザー:利用履歴のないアカウントは、CreateAgentとInvokeInlineAgentの2つのAPIだけが403エラーになる。それ以外のBedrock機能(モデル推論、Knowledge Bases、Guardrails)には影響がない
  • マルチアカウント環境:allowlist判定はアカウント単位。組織内に複数のAWSアカウントがある場合、利用実績のないアカウントだけが対象になる

公式FAQでは「例外申請の手段はない」と明記されている。新規アカウントでエージェント機能が必要な場合は、AgentCoreを使うのが唯一の選択肢だ。

Bedrock Agents ClassicとAgentCoreは何が違うのか

AgentCoreは単なる後継バージョンではなく、設計思想が異なる。Classicは「1つのエージェント設定」を中心にした管理型サービスだったのに対し、AgentCoreはRuntime・Gateway・Memory・Identity・Observabilityという5つのコンポーネントを組み合わせる形に再設計されている。AWS公式の機能対応表を要約すると次のようになる。

Bedrock Agents Classicの機能 AgentCoreでの対応
アクショングループ(OpenAPI + Lambda) Gatewayが REST API/Lambda/コードレベル関数をMCPツールとして公開
Knowledge Bases連携 Gateway経由でのRAGツール統合
トレースUI(前処理・オーケストレーション・観測を可視化) Observabilityによるエンドツーエンドの永続トレース
セッション・メモリ設定(idle TTL等) Memoryによる短期・長期記憶(複数の記憶戦略に対応)
マルチエージェント連携(supervisor等) 限定的対応。agent-as-toolパターンは可能だが、本格的なマルチエージェント連携はカスタム実装が必要
コードインタープリタ AgentCore Code Interpreter(サンドボックス実行)

特に注意したいのは「マルチエージェント連携」の行だ。Classicのsupervisorパターンをそのまま持ってこられるわけではなく、複雑な役割分担を組んでいるエージェントほど移行の実装コストがかかる。設計パターンそのものを見直したい場合はマルチエージェントの設計パターン3選|失敗例と実装ガイドも合わせて確認しておきたい。

もう一つの大きな違いは対応モデルの幅だ。ClassicはBedrockのモデルカタログに限定されるが、AgentCoreはBedrockの全モデルに加えてOpenAI・Gemini・OpenAI互換エンドポイントまで扱える。セッションを再デプロイせずにモデルを切り替えられる点も、Classicにはなかった柔軟性になる。

AgentCore CLIでエージェントを動かしてみる

AWS公式ドキュメントの手順に沿って、最小構成のハーネス(config-basedのエージェント実行環境)を作る流れを見ておく。

# 動作環境: Node.js 20+ と AgentCore CLI、または Python 3.10+ と boto3
# 事前にAgentCore対応リージョンのAWS認証情報とIAM実行ロールが必要

# 1. ハーネスの新規作成
agentcore create --name my-research-agent

# 2. ツールを追加(ブラウザとコードインタープリタの例)
agentcore add tool --harness my-research-agent 
  --type agentcore_browser --name browser
agentcore add tool --harness my-research-agent 
  --type agentcore_code_interpreter --name code-interpreter

# 3. モデルとシステムプロンプトを設定
agentcore add harness 
  --name my-research-agent 
  --model-id us.anthropic.claude-sonnet-4-6-20250514-v1:0 
  --system-prompt "You are a research assistant." 
  --tools agentcore-browser,code-interpreter

# 4. デプロイして呼び出す
agentcore deploy
agentcore invoke --harness my-research-agent 
  --session-id "$(uuidgen)" 
  "Research tropical vacation options under $3k"

注意: 本番環境で使用する前に、必ずテスト環境で動作確認してください。上記の --model-id はサンプルであり、実際に使用可能なモデルIDはAWSコンソールの最新カタログで確認する必要がある。

メモリはデフォルトで有効になっており、--actor-idを渡すとユーザーごとに記憶を分離できる。

agentcore invoke --harness my-research-agent 
  --session-id "$(uuidgen)" --actor-id alice 
  "What did we discuss about the Portugal trip?"

AgentCoreのメモリ設計をもう少し深く知りたい場合は、AIエージェントメモリ比較2026|Mem0・Letta・Zep選び方ガイドで他の実装方式との違いを比較できる。また、既存のBedrock Agentを持っている場合は、agentcore create時に旧設定(モデル・アクショングループ・ナレッジベース・プロンプト)を確認しながら、それぞれ対応するハーネスパラメータへ手動でマッピングしていく作業が必要になる。

移行はいつ・どうやるべきか

公式FAQは「移行の締め切りはない」と明言している。Bedrock Agents Classicには現時点でEOL(提供終了)の予定がなく、既存アカウントは引き続きメンテナンスモードのまま使い続けられる。ただし2026年7月30日以降にリリースされる新モデルはClassicのモデルカタログには追加されず、AgentCore経由でのみ利用可能になる点は明記されている。

移行の判断軸は次のように整理できる。

  • 新規プロジェクト・新規アカウント:選択の余地がない。AgentCoreを使うしかない
  • 既存のClassicエージェントが安定稼働中:急ぐ理由はない。ただし最新モデルを使いたくなった時点でAgentCoreへの移行を検討する必要がある
  • 複雑なオーケストレーションを組んでいる既存エージェント:マルチエージェント連携やステージ別プロンプトオーバーライドを使っている場合、移行コストが大きい。計画的な移行スケジュールを組んだ方がよい

AWSは移行支援として、GitHub公開の「agent toolkit for AWS」にamazon-bedrockスキルを用意している。これは既存のBedrock Agentを検査し、移行可否の判定・コンポーネント対応表の作成・AgentCore CLIでのスキャフォールディングまでを自動化するもので、AWS MCP server経由でも利用できる。コーディングアシスタントに「Help me migrate my Bedrock Agent to AgentCore harness」と指示すると、移行計画を提示した上でデプロイ前に承認を求める設計になっている。単純な構成(モデル+アクショングループ+ナレッジベース)であれば数時間で完了するが、カスタムオーケストレーターやマルチエージェント連携を含む場合は相応の実装工数を見込む必要がある。

料金はどう変わるのか

まず前提として、Bedrock Agents Classic自体には利用料金がかからない。従来通り、裏側で呼び出すモデル推論やLambda実行など、実際に使ったリソース分だけを支払う仕組みは変わらない。

AgentCoreは消費量ベースの課金で、AWS公式の料金ページ(2026年8月時点)を要約すると次の通りだ。

コンポーネント 料金
Runtime / Browser / Code Interpreter(CPU) $0.0895 / vCPU時間
Runtime / Browser / Code Interpreter(メモリ) $0.00945 / GB時間(最小128MB、1秒単位課金)
Gateway(API呼び出し) $0.005 / 1,000回
Gateway(検索API) $0.025 / 1,000回
Gateway(ツールインデックス) $0.02 / 100ツール・月
Memory(短期・新規イベント) $0.25 / 1,000イベント
Memory(長期記憶の保存) $0.75 / 1,000レコード・月
Memory(長期記憶の取得) $0.50 / 1,000回
Identity(非AWSリソース向け) $0.010 / 1,000トークン・APIキー(Runtime/Gateway経由なら無料)
Web Search $7 / 1,000クエリ
Observability CloudWatchの通常料金に準拠

ハーネス自体のオーケストレーション料金は別途かからない。AWSは「AgentCoreのハーネスはClassicの内部プロンプトよりトークン効率が高いため、モデル推論コストは同等かそれ以下になる場合が多い」とも説明している(AWS公式料金ページ、2026年8月時点)。新規のAWSアカウントには最大200ドル分のFree Tierクレジットが付与される。

複数モデル・複数エージェントでコストが膨らみやすい構成では、Runtime・Memory・Gatewayそれぞれの単価を把握した上で予算アラートを組んでおくと安心だ。運用コストの追跡方法全般はAIエージェントのコスト監視入門|トークン可視化と暴走対策で解説している。

よくある誤解と注意点

❌ 「Bedrock Agents Classicは使えなくなった」
⭕ 既存アカウント(過去12ヶ月以内に利用実績あり)は今まで通り全APIを使い続けられる。停止されたのは新規アカウントでのCreateAgent/InvokeInlineAgentのみ

❌ 「今すぐ全部AgentCoreに移行しないといけない」
⭕ 公式に移行の締め切りは設定されていない。ただし新モデルはAgentCore経由でしか使えなくなる点は踏まえておく

❌ 「AgentCoreに移行すればコードを書かずに済む」
⭕ config-basedの「managed harness」であれば宣言的に構築できるが、カスタムオーケストレーションやマルチエージェント連携が必要な場合はコードを書く「code-defined agents」の実装が必要になる

❌ 「対応リージョンはBedrockと同じ」
⭕ AgentCoreの対応リージョンはBedrock本体より少ない場合がある。既存ワークロードのリージョンがAgentCore未対応なら、対応リージョンが揃うまでClassicを使い続けるという選択肢もAWSは公式に案内している

AIエージェント開発者が今週やるべきこと

  1. 自社のAWSアカウントが過去12ヶ月以内にBedrock Agentsを使っているか確認し、allowlist対象かどうかを判定する
  2. 新規プロジェクトの計画がある場合は、AgentCore対応リージョンとモデルカタログを先に確認しておく
  3. 既存エージェントがマルチエージェント連携やステージ別プロンプトオーバーライドを使っているなら、AgentCoreでの再現方法を先に机上検証しておく
  4. 移行を検討するチームは、agent toolkit for AWSのamazon-bedrockスキルで既存エージェントの移行可否診断だけ先に走らせてみる(実際の移行は保留にしてもよい)

よくある質問

Bedrock Agents Classicはいつサービス終了しますか?

2026年8月時点で、明確な終了(EOL)予定は公表されていない。既存アカウントはメンテナンスモードのまま利用を継続できる。

新規アカウントでもBedrock Agents Classicを使う方法はありますか?

公式FAQでは例外申請の手段はないと明記されている。新規アカウントでエージェント機能を使うにはAgentCoreを利用する。

Bedrock Agents ClassicとAgentCoreは何が一番違いますか?

Classicは単一エージェント向けの管理型サービス、AgentCoreはRuntime・Gateway・Memory・Identity・Observabilityの5コンポーネントを組み合わせるプラットフォームという設計思想の違いが最も大きい。対応モデルの幅もAgentCoreの方が広い。

AgentCoreの料金は高くなりますか?

ハーネス自体に追加のオーケストレーション料金はかからず、AWSはトークン効率の改善で同等かそれ以下のコストになるケースが多いとしている。ただしRuntime・Memory・Gatewayはそれぞれ従量課金になるため、利用量次第では変動する。正確な見積もりはAWS公式の料金ページで確認してほしい。

既存のCloudFormation/Terraformテンプレートは書き直しが必要ですか?

allowlistされた既存アカウントであれば、Bedrock Agentsを作成・管理する既存のIaCテンプレートはそのまま動作する。新規アカウントで新しい環境を構築する場合のみ、AgentCoreのリソース定義に置き換える必要がある。

まとめ:今日から始める3つのアクション

今日やること:自社のAWSアカウントがBedrock Agentsの利用実績を持つか(=allowlist対象か)を確認する
今週中:新規プロジェクトで使う予定があるならAgentCoreの対応リージョン・モデルカタログを確認し、簡単なハーネスを1つ動かしてみる
今月中:既存のClassicエージェントについて、マルチエージェント連携や複雑なプロンプトオーバーライドの有無を棚卸しし、移行コストの見積もりを立てる

参考・出典


著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人超。100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書累計3万部突破。

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