ニュース

Gemini Robotics 2解剖|3モデルの役割と開発者の選び方

Gemini Robotics 2解剖|3モデルの役割と開発者の選び方

この記事の結論

Gemini Robotics 2は2026年7月30日発表の3モデル体制。VLA・ER2・On-Device2の役割分担とAPI料金、安全性の仕組みを開発者視点で整理する。

Google DeepMindは2026年7月30日、ヒューマノイドロボットの全身制御・巧緻動作・複数ロボット連携を1つのモデル体系でカバーする「Gemini Robotics 2」ファミリーを発表した。3モデットのうち今日から誰でも試せるのは推論役の「Gemini Robotics ER 2」だけで、Gemini API経由で入力100万トークンあたり2ドル・出力10ドルという、通常のGeminiテキストモデルと同じ課金体系で公開されている。

今回の発表はロボット業界だけの話ではない。ER 2が担う「タスク計画」「複数エージェントへのハンドオフ」「安全性オーケストレーション」は、ソフトウェア型のAIエージェントを設計する開発者にとっても参考になる設計パターンだ。この記事では2026年8月時点で確認できる公式情報をもとに、3モデルの役割分担・性能・料金・アクセス方法を整理し、AIエージェント開発者が今週から何を試せるかをまとめる。

何が発表されたのか — 3モデルの全体像

Gemini Robotics 2は単一モデルではなく、役割の異なる3モデルのセットとして発表された。それぞれ提供状況が異なる点に注意したい。

モデル 役割 公開状況(2026年8月時点) アクセス方法
Gemini Robotics 2(VLA) 視覚・言語入力をモーター制御に変換する実行担当。ヒューマノイドの全身制御と、両手・グリッパーでの巧緻動作を1つのモデルチェックポイントでカバー アーリーアクセスパートナー限定 非公開
Gemini Robotics ER 2 空間認識・タスク計画・複数ロボット連携を担う「頭脳」役。VLAや外部ツールをオーケストレーションする 一般公開(プレビュー) Gemini API / Google AI Studio。Gemini Enterprise Agent Platformはプライベートプレビュー
Gemini Robotics On-Device 2 ネットワーク接続なしでロボット本体上で完結する軽量版VLA トラステッドテスター限定 非公開

実演にはApptronikのヒューマノイド「Apollo 2」が使われ、5本指で22自由度を持つ「SharpaWave」ハンドを使った紐結びやジップロック袋の封止といった細かい動作の制御が公開された。さらにApollo 2とFranka製デュアルアーム型ロボット(Franka Duo)を組み合わせ、Apollo 2がタスクを指示し、Franka Duo側が工具箱に部品を詰めるという異なるロボット同士の連携デモも披露されている。ER 2が両者の間で「共通の意味理解」を介してハンドオフを調整する仕組みだ。

これまでの進化 — 2025年3月から1年半でどう変わったか

Gemini Roboticsは今回が初登場ではない。直近ニュースだけを見ると唐突に見えるが、実際は1年半かけて段階的に拡張されてきた系譜がある。

時期 できごと
2025年3月12日 Gemini Robotics / Gemini Robotics-ER が初登場(Gemini 2.0ベースのVLA)
2025年9月25日 Gemini Robotics 1.5 / ER 1.5 を発表。思考・計画能力を強化
2026年4月15日 Gemini Robotics-ER 1.6 を発表。計器の数値読み取りなど推論精度を強化
2026年7月29〜30日 安全性評価レポート公開(7/29)に続き、Gemini Robotics 2 / ER 2 / On-Device 2 を発表(7/30)

今回の目玉は「全身制御」だ。従来のGemini Roboticsは主にテーブル上でのアーム操作(tabletop manipulation)が中心だったが、Gemini Robotics 2では歩行・バランス・しゃがみ込みまで含めたヒューマノイドの全身を1つのポリシーで動かせるようになった。

精度で比較する — 全身制御・器用さ・ER 2の推論精度

DeepMindが公開したテクニカルレポート由来の報告値として、VLAモデルのタスク別成功率が紹介されている。タスクの難度によって幅があるため、単一の数値ではなく範囲で捉えるべきだ。

タスク種別 成功率(報告値・範囲)
棚からの物品取り出しなど全身制御タスク 45.7%〜76.3%
5本指ハンドでの巧緻動作(紐結び・ジップロック封止等) 32%〜92%
パラレルグリッパーでの巧緻動作(密なパッキング等) 74.2%〜89.6%

一方、推論役のER 2は「タスクの進行度をどれだけ正確に把握できるか」で評価されている。公式発表によると、タスク完了段階の分類精度は57.4%、動画中の重要な瞬間(moment-finding)の検出精度は91.3%・平均レイテンシ0.96秒とされる。VLAが「動く」担当なら、ER 2は「今どこまで進んでいるか」「次に何をすべきか」を見極める担当だと考えると役割分担が理解しやすい。

On-Device 2は新しいロボットの機体(embodiment)に少数のデータだけで適応できる点が特徴だ。公開されたベンチマークでは、200例未満のデータと数時間の適応作業で、SO101プラットフォームは成功率6.7%から53.3%へ、Dexmateプラットフォームは24.4%から75.6%へと改善したと報告されている。工場やスタートアップが独自ハードウェアに合わせてファインチューニングする際の「立ち上げコスト」が下がる方向性を示すデータだ。

安全性で比較する — ASIMOV-Agenticとは何か

今回の発表でロボット業界以外の開発者にも参考になるのが、新設された安全性ベンチマーク「ASIMOV-Agentic」だ。名称はSF作家アイザック・アシモフに由来する。このベンチマークは、エージェントが以下をどれだけ実行できるかを測定する。

  • 安全でないツール呼び出し・操作を拒否できるか
  • 確信度が閾値を下回った時に動作を停止できるか
  • タスクを安全に完了できないと判断した場合、自律的に判断を進めず人間の介入を要求できるか

DeepMindはER 2を「安全制約の遵守と人との近接検知のベンチマークで、これまでで最も安全性の高いロボティクスモデル」と説明している。近くに人が入ってきたら検知して安全機能を発動し、安全に停止する仕組みが強化された。

この「不確実なら止まって人に聞く」という設計思想は、物理ロボットに限らずソフトウェア型のAIエージェントを本番運用する際のガードレール設計にもそのまま応用できる。承認フローの設計については、Human-in-the-Loop完全ガイド|エージェント承認設計【2026】で整理しているので、あわせて参照してほしい。

コストとアクセス方法で比較する

2026年8月時点で一般開発者が実際に手を動かせるのはER 2だけだ。Gemini APIの公式料金ページでは、他のGeminiモデルと同じ表に並ぶ形で以下の価格が公開されている。

課金体系 入力(テキスト/画像/動画/音声) 出力
Standard(同期呼び出し) $2.00 / 100万トークン $10.00 / 100万トークン
Batch(バッチ処理) $1.00 / 100万トークン $5.00 / 100万トークン

これに加えてコンテキストキャッシュがStandardで100万トークンあたり0.20ドル、Batchで0.10ドル、ストレージ料金が100万トークン・1時間あたり1.00ドルで設定されている(2026年8月時点、ai.google.dev公式料金ページより)。企業向けの営業商談を経ないと使えないロボティクス基盤が多い中、通常のAPIキーだけで単価を確認しながら検証できる点は珍しい。

VLA本体(Gemini Robotics 2)とOn-Device 2は現時点で一般公開されておらず、パートナー・トラステッドテスター向けの早期アクセスに限られる。ロボット本体を持たない一般のAIエージェント開発者は、まずER 2の空間推論・タスク計画能力を自社のエージェント基盤に組み込む形での検証が現実的な入り口になる。エージェント構築ツール全体の選び方はAIエージェントツール比較完全ガイドでも整理している。

Gemini Robotics ER 2を実際に呼び出してみる

ER 2は画像中の物体位置を正規化座標で返す「pointing」タスクに強い。公式ドキュメントに掲載されているPythonサンプルは以下の通りだ。

from google import genai

PROMPT = """
Point to no more than 10 items in the image. The label returned
should be an identifying name for the object detected.
The answer should follow the json format: [{"point": <point>,
"label": <label1>}, ...]. The points are in [y, x] format
normalized to 0-1000.
"""
client = genai.Client()

uploaded_file = client.files.upload(file="my-image.png")

image_response = client.interactions.create(
    model="gemini-robotics-er-2-preview",
    input=[
        {
            "type": "image",
            "uri": uploaded_file.uri,
            "mime_type": uploaded_file.mime_type
        },
        {"type": "text", "text": PROMPT}
    ],
    generation_config={"thinking_level": "high"},
)

print(image_response.output_text)

動作環境: Python 3.10以上、Interactions API対応版の google-genai SDK。client.interactions.create()はロボティクス特化のInteractions APIエンドポイントで、返り値はJSON配列(各要素がpointlabelを持つ)となる。返ってきた座標は、そのままロボットの制御APIやVLAモデルに渡して実行させる設計を想定している。gemini-robotics-er-2-previewはストリーミング最適化版のgemini-robotics-er-2-streaming-previewも用意されている。2026年8月時点ではプレビュー提供のモデルのため、本番導入前には必ず最新のAPIドキュメントで仕様変更・GA移行状況を確認すること。Interactions API自体の背景実行・長時間タスクの扱いについてはGemini APIのbackground実行入門|長時間タスク実装ガイドも参考になる。

AIエージェント開発者が今週やるべきこと

  1. Google AI StudioでER 2を触ってみる: ロボットがなくても、画像に対するpointing/物体検出タスクとしてER 2の空間推論精度を確認できる
  2. 「空間認識ツール」としての統合を検討する: 画面操作・在庫管理・現場カメラ映像の解析など、物理ロボット以外のユースケースでもER 2の物体位置特定能力は転用できる可能性がある
  3. ASIMOV-Agenticの設計思想をソフトウェアエージェントに輸入する: 「確信度が低ければ止まって人に聞く」というガードレールパターンを、自社のエージェント承認フローに反映できないか検討する
  4. Gemini Enterprise Agent Platformのプライベートプレビューを申請する: ER 2を企業向けエージェント基盤に統合したい場合の選択肢になる
  5. VLA本体の一般提供に備えてPoC定義を進める: Gemini Robotics 2本体とOn-Device 2はまだ早期アクセス段階のため、一般提供開始のタイミングですぐに検証できるよう、社内でのユースケース候補を今のうちに整理しておく

よくある質問

Q. Gemini Roboticsとは何ですか?
A. Google DeepMindが開発する、ロボットに視覚・言語理解と物理的な行動を結びつけるAIモデル群の総称。2025年3月に初代が発表され、2026年7月30日発表のGemini Robotics 2で全身制御・複数ロボット連携に対応した。

Q. Gemini Robotics 2は発表されましたか?
A. はい。2026年7月30日にGoogle DeepMindが公式ブログで発表した。安全性評価レポートは前日の7月29日に先行公開されている。

Q. Gemini Robotics 2はいつから使えますか?
A. 2026年8月時点で一般開発者がすぐ使えるのはGemini Robotics ER 2のみ(Gemini API / Google AI Studioでプレビュー公開)。VLA本体とOn-Device 2はパートナー・トラステッドテスター向けの早期アクセス段階で、一般提供の時期は公式に明言されていない。

参考・出典

この記事を読んで、AIエージェント開発への実装イメージが固まってきた方へ

UravationではAIエージェント導入の研修・コンサルを行っています。


あわせて読みたい:


著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人超。
100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書累計3万部突破。

ご質問・ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

Need help moving from reading to rollout?

この記事を読んで導入イメージが固まってきた方へ

Uravationでは、AIエージェントの要件整理、PoC設計、社内導入、研修まで一気通貫で支援しています。

この記事をシェア

X Facebook LINE

※ 本記事の情報は2026年8月時点のものです。サービスの料金・仕様は変更される可能性があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。

関連記事