AIエージェント入門

AIエージェントとは|仕組み・種類・作り方の最短手順【2026年9月】

AIエージェントとは|仕組み・種類・作り方の最短手順【2026年9月】

この記事の結論

AIエージェントとは、目標を受けて手順を自分で決め、道具を呼び、結果を見て次を決めるプログラム。2026年9月27日時点の公式情報で、仕組みの5部品・種類・作り方3通り・MCPとA2Aの関係・単価と決めるべき5点を整理します。

2026年9月27日時点で、AIエージェントとは「目標を渡すと、手順を自分で決めて、道具(ツール)を呼び、返ってきた結果を見て次の一手を決める。これをタスクが終わるまで自分で繰り返すプログラム」です。Anthropic の Claude Code 公式ドキュメントは「エージェントとは、自分で手順を計画し、ファイルを読む・コマンドを実行する・コードを編集するといった道具を呼び出してタスクを完了させるアプリケーション」と定義しています。チャットAIとの違いは出力の質ではなく制御の持ち主で、人が次の指示を出すのがチャット、次の指示を自分で決めるのがエージェントです。

作り始める側から見ると、2026年9月27日時点の最短手順は3行です。OpenAI Agents SDK なら pip install openai-agents のあと Agent(name=..., instructions=...) を作り Runner.run_sync() に渡すだけで1往復が動きます。Google ADK なら pip install google-adk のあと adk create my_agent、adk run my_agent の3コマンドです。費用は使うモデル次第で、Anthropic の公式料金表では Claude Sonnet 5 が入力100万トークンあたり2ドル・出力100万トークンあたり10ドル(1ドル150円換算で300円・1,500円)、OpenAI の公式料金表では gpt-6-sol が同じ条件で2ドル・10ドルです。

この記事は、Anthropic「Building effective agents」、Claude Agent SDK 公式ドキュメント、OpenAI Agents SDK 公式ドキュメント、Google ADK 公式ドキュメント、Model Context Protocol 公式、A2A Protocol 公式、Microsoft Learn の「Agents for Microsoft 365 Copilot」、および3社の公式料金ページを2026年9月27日に取得し、その記載だけで組み立てています。筆者の環境で動かして測った数値は含みません。日本語の解説記事は「自律的に判断する」「業務を任せられる」といった言い換えで止まりがちですが、実装に入ると詰まるのは定義ではなくループの止め方・権限・費用の上限です。以下ではその順番で整理します。

AIエージェントとは|3社の公式定義と、チャットボット・ワークフローとの線引き

この記事の要点

  • 要点1:公式の定義は3社でほぼ一致しています。Anthropic は「LLM が自分の処理と道具の使い方を動的に決め、どう達成するかの制御を持つ系」をエージェント、「LLM と道具が事前に決めたコード経路で動く系」をワークフローと呼び分け、両方をまとめてagentic systemsと定義しています。OpenAI は「指示と道具を備えた LLM」、Google ADK は「本番品質のエージェントを作るためのオープンソースの開発フレームワーク」という立て方です。
  • 要点2:部品は5つです。モデル(判断)・道具(外部への手足)・記憶(往復をまたぐ文脈)・計画(手順の分解)・ループ(環境から結果を受けて次を決める繰り返し)。Anthropic は各ステップで環境からground truth(実際に起きたこと)を取ることと、最大反復回数のような停止条件を置くことを推奨しています。
  • 要点3:作り方は3通りに整理できます。各社の Agent SDK 系(OpenAI Agents SDK・Claude Agent SDK・Google ADK)、フレームワーク系(LangGraph・CrewAI など)、ノーコード/ローコード系(Microsoft の declarative agents・Copilot Studio)。Anthropic は公式に「まず LLM API を直接使うところから始め、フレームワークを使うなら中のコードを理解せよ」と書いています。

対象読者:これから自分でエージェントを1本作るエンジニア・PM。社内に説明する側の人も、下の比較表とチェック5点をそのまま使えます。

今日やること:公式のクイックスタートを1つ選び、道具を1つだけ持たせたエージェントを動かす。同時に「止める条件」と「承認が要る操作」を先に紙に書く。

「エージェント」という言葉は書き手によって指す範囲が違います。Anthropic は公式記事「Building effective agents」(2024年12月19日公開)で、その揺れを次のように整理しています。長期間ひとりで動き続ける完全自律のシステムを指す人もいれば、決められた手順に沿って動く実装を指す人もいる。Anthropic はその全部を agentic systems とまとめたうえで、設計上の区別としてワークフローとエージェントを分けます。

呼び方 公式の説明(要約) 手順を決めるのは 止め方
ワークフロー LLM と道具が、あらかじめ決めたコード経路(predefined code paths)を通って動く系 書いた人(コード) 経路が終われば終わる
エージェント LLM が自分の処理と道具の使い方を動的に決め、どう達成するかの制御を保つ系 モデル 完了条件か停止条件(最大反復回数など)
augmented LLM 検索・道具・記憶という補強を足した LLM。agentic systems の土台の部品 1往復ごとに書いた人 1往復で終わる

この線引きは実装の判断に直結します。Anthropic は「まず一番単純な解を探し、必要になってから複雑さを足す」「そもそも agentic なシステムを作らない選択もある」と明言し、エージェントは遅延と費用を性能と引き換えにしていると書いています。決まった手順で足りるならワークフロー、手数が事前に読めないならエージェント、という順番です。ワークフロー側の型についてはAIエージェントのワークフロー設計パターン5選で個別に扱っています。

読み方は「エーアイ エージェント」で、英語表記は AI agent です。なお「エージェント」という語は AI 以外でも使われます。人材紹介の仲介業者、サーバーに常駐して情報を集める監視用の常駐プログラムなども同じ語です。この記事で扱うのは、LLM を判断の中心に置いたソフトウェアとしての AI エージェントに限ります。

仕組み|モデル・道具・記憶・計画・ループの5部品

公式ドキュメントを部品に分解すると、どのベンダーの実装も同じ5つに落ちます。Anthropic は土台を「検索・道具・記憶という補強を持つ LLM」と説明し、OpenAI Agents SDK は「指示・道具・ガードレール・ハンドオフと、タスクが終わるまで回る組み込みのループ」を主要機能として挙げています。

モデル・道具・記憶・計画・ループの5つのカードを左から右へ並べ、ループから先頭へ戻る矢印を引き、下段に「各ステップで ground truth を取る」「停止条件で制御を保つ」を置いた図

部品 役割 公式での呼び名(例)
モデル 次に何をするかを決める OpenAI: Models/ADK: model="gemini-flash-latest"
道具 外部を読む・書く・実行する OpenAI: Function tools/Claude: Built-in tools(Read・Write・Edit・コマンド実行・Web検索)
記憶 往復をまたいで文脈を保つ OpenAI: Sessions/Claude: Sessions(再開・分岐が可能)
計画 目標を手順に分解する Anthropic: plan and operate independently/Claude Agent SDK: planning its own steps
ループ 結果を見て次の一手を決める OpenAI: built-in loop that continues until the task is complete/Claude: agent loop

ここで実装者が一番外しやすいのはループの入口と出口です。Anthropic は、エージェントは人の指示か対話から仕事を始め、目標がはっきりしたら自分で計画して動き、必要なら人に判断を戻す、と書いています。そして実行中の各ステップで環境から ground truth(道具の実行結果やコード実行の結果など)を取って進捗を評価することが決定的に重要だとしています。出口については、タスク完了で終わるのが普通だが、最大反復回数のような停止条件を入れて制御を保つのも一般的と明記されています。

最小の形は3行です。以下は OpenAI Agents SDK 公式トップページに載っている hello world の例です(動かしていない場合も、公式に掲載されているコードであることを明示します)。

pip install openai-agents
from agents import Agent, Runner

agent = Agent(name="Assistant", instructions="You are a helpful assistant")

result = Runner.run_sync(agent, "Write a haiku about recursion in programming.")
print(result.final_output)

道具を1つ持たせると、ここから先が「エージェントらしい」動きになります。次は公式クイックスタートの例で、@tool を付けた関数がそのまま道具になります。スキーマは自動生成され、検証は Pydantic が担当すると公式に書かれています。

import asyncio
from agents import Agent, Runner
from agents.decorators import tool

@tool
def history_fun_fact() -> str:
    """Return a short history fact."""
    return "Sharks are older than trees."

agent = Agent(
    name="History Tutor",
    instructions="Answer history questions clearly. Use history_fun_fact when it helps.",
    tools=[history_fun_fact],
)

async def main():
    result = await Runner.run(agent, "Tell me something surprising about ancient life on Earth.")
    print(result.final_output)

if __name__ == "__main__":
    asyncio.run(main())

記憶の持たせ方は3通りが公式に整理されています。result.to_input_list() を次の Runner.run() に渡して自分で履歴を管理する方法、session=... を渡して SDK に保存と読み込みを任せる方法、previous_response_id または conversation_id でサーバー側の状態を引き継ぐ方法です。どれを選ぶかで移植性と手離れが変わります。設計の分かれ目はAIエージェントのメモリ実装入門で扱っています。計画の型(ReAct・Reflexion など)はAIエージェント推論パターンにまとめてあります。

種類|単体・マルチ・常駐・コーディングの4系統

「AIエージェントの種類」は分類軸が乱立しがちなので、ここでは公式ドキュメントに実装単位が存在するものだけを4系統に絞ります。

単体・マルチ・常駐と隔離実行・コーディングの4つのカードを横に並べ、下段に「Handoffs 専門が会話を引き取る」「Agents as tools 統括が道具として呼ぶ」を置いた図

系統 何が動くか 公式にある実装単位
単体 1体が道具を持ってループする OpenAI: Agent と Runner/ADK: root_agent
マルチ 複数体が分担する OpenAI: Handoffs(専門が会話を引き取る)と Agents as tools(統括が道具として呼ぶ)/Anthropic: orchestrator-workers
常駐・隔離実行 作業場を持って長く動く、途中から再開する OpenAI: Sandbox agents(resumable sandbox sessions)/Anthropic: Managed Agents(Anthropic 管理のクラウドサンドボックス、または自社インフラ上の自前サンドボックス)
コーディング リポジトリを読んで直す Anthropic: SWE-bench Verified のタスクを解くコーディングエージェント/Claude Agent SDK のクイックスタート(バグを見つけて直すエージェント)

マルチの2択は公式が判断基準まで書いています。OpenAI のクイックスタートは「最終的な答えを誰が持つかを先に決めろ」として、専門エージェントがその場の会話を引き取るなら Handoffs、統括が主導権を持ったまま専門を道具として呼ぶなら Agents as tools と整理しています。Handoffs の定義は、振り分け側に handoffs=[...] で選択肢の一覧を持たせ、専門側に handoff_description で「どんなときに任せるか」を書く形です。

from agents import Agent

history_tutor_agent = Agent(
    name="History Tutor",
    handoff_description="Specialist agent for historical questions",
    instructions="You answer history questions clearly and concisely.",
)

triage_agent = Agent(
    name="Triage Agent",
    instructions="Route each homework question to the right specialist.",
    handoffs=[history_tutor_agent],
)

Anthropic 側の分担の型は、中央の LLM がタスクをその場で分解して worker に投げ、結果をまとめる orchestrator-workers です。公式は、変更が必要なファイル数や変更の性質が事前に読めないコーディングのような仕事に向くと書いています。並列化(parallelization)との違いは、サブタスクを事前に決めるかどうかだけです。設計の当たり外れはマルチエージェントの設計パターン3選にまとめています。

Anthropic が公式に挙げているワークフロー5型は、エージェントを作る前に検討する候補として押さえておくと無駄が減ります。

型 形 公式が挙げる向き先
prompt chaining 手順を固定して順に渡す。途中に gate(プログラムでの確認)を置ける きれいに分解できる仕事。遅延を払って精度を取る
routing 入力を分類して専用の後段へ振る 種類がはっきり分かれ、分類が正確にできる仕事
parallelization sectioning(独立した部分を並列)と voting(同じ仕事を複数回) 速度が欲しい、または複数視点で確度を上げたい仕事
orchestrator-workers 中央が動的に分解して委譲し、結果を統合 サブタスクが事前に読めない仕事
evaluator-optimizer 生成する側と評価する側をループさせる 評価基準が明確で、反復に意味がある仕事

ローカルで完結させたい場合の選び方はローカルAIエージェントとは、どこまで任せるかの段階設計はAIエージェントの自律性レベルで別に扱っています。

作り方3通り|Agent SDK系・フレームワーク系・ノーコード系

2026年9月27日時点で、最初の1本を作る経路は大きく3つです。どれも公式のクイックスタートが用意されているので、比較して選んだあとは公式の手順をそのまま踏むのが最短です。

Agent SDK系・フレームワーク系・ノーコード系の3つのカードを横に並べ、下段に「まず LLM API を直接使う」「中のコードを理解する」「declarative agents は自動起動に非対応」を置いた図

(1) 各社の Agent SDK 系

SDK 導入 最小の形 実行
OpenAI Agents SDK(Python) pip install openai-agents Agent(name, instructions) を Runner に渡す 自分のコードから呼ぶ。トレースは OpenAI ダッシュボードの Trace viewer
Claude Agent SDK(Python/TypeScript) uv add claude-agent-sdk(pip も可)/npm install @anthropic-ai/claude-agent-sdk query(prompt=..., options=ClaudeAgentOptions(...)) を非同期で回す 同梱の Claude Code バイナリが動く。API キーは ANTHROPIC_API_KEY
Google ADK(Python・TypeScript・Go・Java・Kotlin) pip install google-adk adk create my_agent で雛形。agent.py の root_agent が唯一の必須要素 adk run my_agent(CLI)または adk web --port 8000(開発用のWeb UI)

OpenAI Agents SDK は公式に「Swarm(以前の実験的な実装)の本番向けの後継」と位置づけられ、primitives は Agents/Handoffs(Agents as tools)/Guardrails の3つだけと書かれています。Responses API を直接使うか SDK を使うかの判断も公式にあり、ループ・道具の実行・状態管理を自分で持ちたいなら Responses API、往復・道具実行・ガードレール・ハンドオフ・セッションを任せたいなら SDK、と整理されています。実装の続きはOpenAI Agents SDK完全ガイドにあります。

Claude Agent SDK は「Claude Code をライブラリとして使う」という立て方です。公式の比較表は、自分が運用するプロセスに Claude Code のエージェントを埋め込むなら Agent SDK、端末で対話的に使うなら Claude Code CLI、Claude API を自分のコードから直接叩いてループを自分で書くなら Client SDK、エージェントの運用ごと Anthropic に持たせるなら Managed Agents、と4経路を分けています。Python と TypeScript 以外の言語からは、CLI を -p と --output-format json でサブプロセスとして動かす方法が案内されています。

import asyncio
from claude_agent_sdk import query, ClaudeAgentOptions, AssistantMessage

async def main():
    async for message in query(
        prompt="Review utils.py for bugs that would cause crashes. Fix any issues you find.",
        options=ClaudeAgentOptions(
            allowed_tools=["Read", "Edit", "Glob"],
            permission_mode="acceptEdits",
        ),
    ):
        if isinstance(message, AssistantMessage):
            for block in message.content:
                if hasattr(block, "text"):
                    print(block.text)

asyncio.run(main())

上の allowed_tools と permission_mode が、後半で扱う権限設計の入口です。公式クイックスタートでは、この2つで「読む・直す・探すは自動承認、編集も自動承認」という設定にしています。手順の詳細はClaude Agent SDK実践ガイドを参照してください。

Google ADK は公式トップで「プロトタイプではなく本番のエージェントを作る」ことを掲げ、Python・TypeScript・Go・Java・Kotlin の5言語で提供されています。Python は3.10以降が必要です。雛形の agent.py は次の形で、道具は普通の関数として書きます。

from google.adk.agents.llm_agent import Agent

def get_current_time(city: str) -> dict:
    """Returns the current time in a specified city."""
    return {"status": "success", "city": city, "time": "10:30 AM"}

root_agent = Agent(
    model='gemini-flash-latest',
    name='root_agent',
    description="Tells the current time in a specified city.",
    instruction="You are a helpful assistant that tells the current time in cities. Use the 'get_current_time' tool for this purpose.",
    tools=[get_current_time],
)

ADK の Web UI については、公式に本番デプロイ用ではなく開発とデバッグ専用という注意書きがあります。社内デモでそのまま常設しないでください。ADK 側の手順はGoogle ADK完全ガイドにまとめています。

(2) フレームワーク系

Anthropic は公式記事の中で、実装を楽にするフレームワークとして Claude Agent SDK・AWS の Strands Agents SDK・ドラッグ&ドロップの GUI ビルダー Rivet・複雑なワークフローを組み立てて試せる Vellum を名前で挙げています。そのうえで注意も書いています。フレームワークは LLM 呼び出し・道具の定義と解析・呼び出しの連結といった低レベルの作業を簡単にする一方、抽象の層が増えて元のプロンプトと応答が見えにくくなり、デバッグが難しくなる。加えて、単純な構成で足りる場面でも複雑さを足したくなる、と指摘しています。

Anthropic の推奨は「まず LLM API を直接使うところから始める。多くのパターンは数行で書ける。フレームワークを使うなら中のコードを理解しておく。中身についての誤った思い込みは顧客のエラーのよくある原因だ」というものです。A2A 公式はフレームワークの例として LangGraph・CrewAI・ADK を挙げています。どれを選ぶかの比較はAIエージェントFW5強徹底比較とAIエージェントツール比較12選にあります。

(3) ノーコード・ローコード系

「aiエージェントとは copilot」で調べる人が多い領域です。Microsoft Learn の「Agents for Microsoft 365 Copilot」は、Copilot 向けのエージェントを作る方法を2つに分けています。

方式 公式の説明 ホスティング 自動起動
declarative agents 自分の指示・知識・アクションを与え、Copilot のオーケストレーターとモデルをそのまま使う Microsoft 365 内。追加のホスティングは不要 非対応。利用者の操作から始まる
custom engine agents オーケストレーターとモデルを自分で持ち込み、完全に作り込む Microsoft 365 外(Azure などのクラウド。追加費用が発生) 対応。利用者の入力なしでも動き出せる

公式は declarative agents の構成要素を「知識(Knowledge)」と「アクション(Actions)」とし、その上にオーケストレーター(知識・スキル・自律性との橋渡しをする中核エンジン)、基盤モデル(推論と生成を担う知能の層)、ユーザー体験の層が乗ると説明しています。custom engine agents はさらに agent-to-agent のやり取りに対応し、エージェント間でタスクを委譲できると書かれています。作り方の道具は、ローコードなら Copilot Studio と Agent Builder、プロコードなら Visual Studio/Visual Studio Code と Microsoft 365 Agents Toolkit(.NET・Python・JavaScript、Semantic Kernel や LangChain)です。GUI で組みたい場合の選択肢としてはDify使い方ガイドも参考になります。

MCPとA2Aの位置関係|道具をつなぐ層と、エージェント同士をつなぐ層

作り方を決めたら、次に外とのつなぎ方を決めます。2026年9月27日時点で、公式に仕様が公開されている標準は2つあり、役割が違います。

上からA2A・MCP・エージェントフレームワーク・モデルの4層を積み上げ、下段に「Agent Card を取得して能力を知る」「sendMessage と sendMessageStream」を置いた層の図

MCP(Model Context Protocol)は、公式に「AI アプリケーションを外部システムにつなぐためのオープンソースの標準」と定義されています。つなぐ先はデータソース(ローカルファイル、データベース)・道具(検索エンジン、電卓)・ワークフロー(専用のプロンプト)です。公式は「AI アプリケーションにとっての USB-C ポートのようなもの」と説明しています。ドキュメント上のバージョン表記は 2026-07-28(latest) です。

A2A(Agent2Agent)は、公式に「AI エージェント間の通信のためのオープンな標準」と定義されています。狙いは、フレームワークやベンダーが違うエージェントに共通の言葉を与えて相互運用できるようにすることです。公式ドキュメントの「What is A2A?」には、エージェントを道具として包む方式(MCP が道具を公開するのと同じやり方)は非効率で、エージェントは本来直接交渉するために作られているのに、道具として包むと能力が制限される、と書かれています。仕様は v1.0 です。

層 公式の説明 代表
A2A 組織やフレームワークをまたいで、エージェント同士の通信を標準化する A2A Protocol v1.0
MCP モデルをデータや外部リソースにつなぐ Model Context Protocol 2026-07-28
エージェントフレームワーク エージェントを組み立てるための道具立て LangGraph・CrewAI・ADK(A2A 公式の例示)
モデル 推論の土台。任意の LLM Claude・GPT・Gemini など

A2A の1リクエストは、公式では3段階(エージェント発見・認証・メッセージ送信)4ステップで説明されています。クライアントはまず相手の Agent Card を GET /.well-known/agent-card で取って能力とエンドポイントを知り、カード内の securitySchemes を読んで必要ならトークンを取得し、そのうえで sendMessage(1往復)または sendMessageStream(タスクの更新をストリームで受ける)を呼びます。ストリームでは Task(Submitted)→ TaskStatusUpdateEvent(Working)→ TaskArtifactUpdateEvent(成果物)→ TaskStatusUpdateEvent(Completed)の順にイベントが流れます。実装の詳細はA2Aプロトコル実装ガイドで扱っています。

SDK 側の対応も公式に記載があります。OpenAI Agents SDK は「MCP server tool calling」を組み込み機能として持ち、リモートの MCP 道具を関数ツールと並べてエージェントに見せられると書かれています。Claude Agent SDK も MCP 経由で外部の道具とデータソースにつなぐ機能を持ちます。つまりMCP は SDK の内側で完結する話、A2A は自社の外にあるエージェントと話す話という切り分けになります。

費用の見方|2026年9月27日時点の公式単価と、ループ前提の試算

エージェントの費用は「1回の応答の値段」では読めません。ループするので、1タスクで積み上がる入力と出力の合計で見ます。Anthropic も公式に「エージェントの自律性は費用の増加と、誤りが積み重なる可能性を意味する」と書いています。まず単価を公式値で押さえます(いずれも100万トークンあたりのドル、2026年9月27日時点の公式料金ページ)。

モデル 入力 キャッシュ読み出し 出力 出典
Claude Sonnet 5 2ドル(300円) 0.20ドル(30円) 10ドル(1,500円) Anthropic 公式料金
Claude Opus 5.5 4ドル(600円) 0.20ドル(30円) 20ドル(3,000円) Anthropic 公式料金
Claude Haiku 4.5 1ドル(150円) 0.10ドル(15円) 5ドル(750円) Anthropic 公式料金
gpt-6-sol 2ドル(300円) 0.20ドル(30円) 10ドル(1,500円) OpenAI 公式料金(Standard)
gpt-6-luna 0.10ドル(15円) 0.01ドル(1.5円) 0.50ドル(75円) OpenAI 公式料金(Standard)
gpt-6-astra 10ドル(1,500円) 1ドル(150円) 50ドル(7,500円) OpenAI 公式料金(Standard)
Gemini 3.8 Flash(global) 0.75ドル(113円) 0.075ドル(11円) 3.75ドル(563円) Google Cloud 公式料金

円は1ドル150円換算です。実際の請求は為替と課税で変わります。公式ページに書かれている注意点で、単価表だけを見ると外すものが4つあります。

  • トークナイザの違い:Anthropic の公式注記によると、Claude 4.7 以降のモデルと Claude Mythos Preview は新しいトークナイザを使い、同じ文章で約30%多いトークンになります(正確な増え方は内容と処理の形によります)。Claude Sonnet 4.6 以前は従来のトークナイザです。単価だけを並べた比較は、ここで逆転することがあります。
  • Gemini 3.8 Flash の期間限定価格:Google Cloud の公式料金ページは、Gemini 3.8 Flash・3.7 Flash・3.6 Flash と CodeMender を2026年12月31日まで入力0.75ドル・出力3.75ドルの導入価格とし、2027年1月1日から入力1.50ドル・出力7.50ドルの標準価格になると明記しています。
  • リージョン指定の上乗せ:Anthropic は Claude Sonnet 4.5・Haiku 4.5・Opus 4.5 以降で、リージョン/マルチリージョンのエンドポイントはグローバルに対して10%の上乗せと書いています。OpenAI も2026年3月5日以降にリリースされたモデルのリージョン処理(データ所在地)エンドポイントは10%の上乗せと書いています。
  • プロンプトキャッシュ:両社ともキャッシュへの書き込みは入力より高く、読み出しは大幅に安くなる設計です(例:Claude Sonnet 5 は5分の書き込みが2.50ドル、読み出しが0.20ドル)。同じシステムプロンプトと同じ道具定義を毎ターン送るエージェントでは、ここが効きます。

試算例を1つ置きます(実測値ではありません。前提と式を明示した机上の計算です)。1タスクあたり入力の合計が20万トークン、出力の合計が2万トークンだと仮定します。Claude Sonnet 5 なら 0.2 × 2 = 0.4ドル、0.02 × 10 = 0.2ドル、合計0.6ドル(1ドル150円換算で90円)。gpt-6-luna なら 0.2 × 0.10 = 0.02ドル、0.02 × 0.50 = 0.01ドル、合計0.03ドル(約4.5円)。1日100タスクなら前者は約9,000円/日、後者は約450円/日です。入力の合計はループ回数と道具の戻り値の長さで決まるので、止め方を決めていないエージェントの費用は事前に見積もれません。削り方はAIエージェントのコスト最適化7原則にまとめています。

なお OpenAI の公式料金ページには、Priority processing が2026年7月30日に Fast mode へ改称され、API リクエストでは service_tier: "priority" と service_tier: "fast" のどちらも使えると書かれています。古い記事のパラメータ名がそのまま動くのは、この記載が根拠です。

導入前に決める5点|権限・承認・ログ・費用上限・評価

ここが「動くデモ」と「業務で回るエージェント」の分かれ目です。5つとも公式ドキュメントに対応する機能があるので、決めた内容をそのまま設定に落とせます。

権限・承認・ログ・費用上限・評価の5つのカードを横に並べ、下段に「設計を単純に保つ」「計画手順を明示する」を置いたチェックリストの図

決めること 決め方の問い 公式にある受け皿
権限 どの道具を自動で実行させるか Claude Agent SDK: allowed_tools と Permissions/OpenAI: Guardrails・Tool guardrails
承認 どこで人に戻すか 両社の Human-in-the-loop(OpenAI は専用ページ、Anthropic は「チェックポイントか行き詰まりで人の判断を待てる」と記述)
ログ 何を残せば後から追えるか OpenAI: 組み込みの Tracing と Trace viewer/Claude Agent SDK: Observability with OpenTelemetry
費用上限 いくらで止めるか Claude Agent SDK: Track cost and usage/Anthropic が推奨する停止条件(最大反復回数など)
評価 良くなったと何で言うか OpenAI: 評価・ファインチューニング・蒸留の各ツールとの連携/Anthropic:「性能を測って実装を回す」

権限の初期値は緩めないほうが安全です。Claude Agent SDK のクイックスタートは allowed_tools=["Read", "Edit", "Glob"] と permission_mode="acceptEdits" という、必要な道具だけを名前で列挙する形を例にしています。ADK の Web UI(adk web)は公式に開発とデバッグ専用と明記されているので、本番の入口にしないでください。権限と組織のルールの落とし込みはAIエージェント ガバナンス・権限設計で扱っています。

Anthropic は実装時の原則を3つに絞っています。設計を単純に保つ、エージェントの計画手順を明示して透明性を優先する、道具のドキュメントとテストを通じて agent-computer interface(ACI)を丁寧に作る。さらに、サンドボックス環境での十分なテストと適切なガードレールを推奨しています。

道具の作り方については、公式に具体的な失敗と対処が書かれています。SWE-bench 向けのエージェントを作ったとき、Anthropic は全体のプロンプトよりも道具の最適化に多くの時間を使ったと述べています。例として、エージェントがルートディレクトリから移動した後に相対パスを使う道具で間違えるという症状があり、道具の引数を常に絶対パスを要求する形に変えたところ、モデルは間違えずに使えるようになったとしています。道具の形式選びの指針も3つ挙げられています。書き始める前に「考える」ためのトークンを十分に与える、インターネット上の自然な文章に近い形式にする、何千行もの行数を正確に数えるような形式上の負担を作らない、です。

導入の順番そのものを設計したい場合はAIエージェント実装5フェーズが使えます。

失敗パターン4つ

公式ドキュメントの記述から読み取れる、最初の1本でつまずきやすい形を4つ挙げます。

  • ❌ 停止条件を置かずにループを回す/⭕ 最大反復回数と費用の上限を先に決める。Anthropic は停止条件を入れて制御を保つことを一般的な作法として挙げ、エージェントは自律性のぶん費用が上がり誤りが積み重なる可能性があると書いています。上限のない実験は、失敗したときに請求で気づくことになります。
  • ❌ 最初からフレームワークで組む/⭕ まず LLM API を直接呼んで、数行で動く形を見てから決める。Anthropic は公式に、抽象の層が増えるとプロンプトと応答が見えなくなりデバッグが難しくなる、中身についての誤った思い込みは顧客のエラーのよくある原因だ、と書いています。
  • ❌ 開発用の画面をそのまま社内に開ける/⭕ 実行経路を分ける。ADK の公式ドキュメントは adk web を本番デプロイ用ではないと明記しています。デモ用のUIと運用の入口を同じものにすると、権限と監査ログが抜けたまま使われ始めます。
  • ❌ エージェントを道具として包んで済ませる/⭕ 相手がエージェントなら A2A、相手が道具やデータなら MCP を使う。A2A 公式は、エージェントを道具として包む方式は非効率で、エージェントが本来できることを制限すると書いています。逆に、単機能で状態を持たない処理(計算やデータベース照会)を A2A で包むのも過剰です。

よくある質問

AIエージェントとは何ですか?

目標を受け取って、手順を自分で決め、道具を呼び、結果を見て次を決める、という繰り返しを自分で回すプログラムです。Anthropic は「LLM が自分の処理と道具の使い方を動的に決め、どう達成するかの制御を保つシステム」と定義し、あらかじめ決めたコード経路で動くものはワークフローと呼び分けています。

生成AI(チャットAI)との違いは何ですか?

次の一手を誰が決めるかが違います。チャットは1往復ごとに人が指示を出します。エージェントは目標だけを受け取り、途中の手順は自分で決めます。Anthropic の公式記事の言い方では、検索・道具・記憶を足した「augmented LLM」が土台の部品で、それを固定の経路で並べるとワークフロー、経路の選択自体をモデルに任せるとエージェントになります。

Copilot のエージェントとは何ですか?

Microsoft Learn の定義では、特定の領域に合わせた専門の AI アシスタントとして Microsoft 365 Copilot の機能を拡張するものです。作り方は2種類で、Copilot のオーケストレーターとモデルをそのまま使う declarative agents と、オーケストレーターとモデルを自分で持ち込む custom engine agents があります。利用者の入力なしに自分から動き出せるのは custom engine agents だけで、declarative agents は非対応と公式の比較表に書かれています。

具体例を1つ挙げるとどんなものですか?

Claude Agent SDK の公式クイックスタートが作るのは、指定したファイルを読んでクラッシュにつながるバグを探し、そのまま直すエージェントです。Anthropic は自社の実装例として、SWE-bench Verified のタスクをプルリクエストの説明文だけを手がかりに解くコーディングエージェントと、Claude がコンピュータを操作して作業を行う computer use の参照実装を挙げています。Microsoft は例として、連絡先を Dynamics や Salesforce の営業リードに変え、打ち合わせを設定し、顧客に連絡する Sales Agent for Copilot を挙げています。

プログラミングなしで作れますか?

Microsoft の declarative agents は、ローコードの Agent Builder や Copilot Studio で作れると公式に記載があります。ただし公式の比較表では、declarative agents は個人利用を前提とし、カスタマイズは Copilot のオーケストレーターとモデルの範囲に限られ、自動起動には対応しないとされています。複雑なワークフローや別のモデルを使いたい場合は custom engine agents 側になり、追加のホスティング費用が発生します。

ChatGPT・Claude・Gemini のどれで作るべきですか?

公式の作りが違うので、作りたいものから逆に選ぶのが早いです。ファイルとコマンドを扱う作業を任せたいなら Claude Agent SDK(Claude Code の道具・権限・セッションがそのまま使える)、複数体の分担とガードレールを標準機能で持ちたいなら OpenAI Agents SDK、Python 以外の言語(TypeScript・Go・Java・Kotlin)で書きたい、あるいは CLI で雛形から始めたいなら Google ADK です。3つとも公式のクイックスタートが数分で終わる長さなので、1つに決める前に順に動かして比べるのが確実です。

MCP と A2A はどちらを先に入れるべきですか?

多くの場合は MCP が先です。MCP はモデルをデータや道具につなぐ標準で、OpenAI Agents SDK と Claude Agent SDK のどちらも組み込みで対応しています。A2A は他社・他フレームワークのエージェントと話す段階で必要になる標準で、Agent Card の公開とトークンの扱いが前提になります。自社の中だけで完結する構成なら、A2A は後回しにできます。

費用はどのくらいかかりますか?

単価は2026年9月27日時点の公式料金で、Claude Sonnet 5 が入力100万トークンあたり2ドル・出力10ドル、gpt-6-luna が入力0.10ドル・出力0.50ドル、Gemini 3.8 Flash(global)が入力0.75ドル・出力3.75ドルです。ただしエージェントは1タスクで何往復もするため、単価ではなく1タスクの合計トークンで見ます。本文の試算例(入力20万トークン・出力2万トークン)では Claude Sonnet 5 で0.6ドル、gpt-6-luna で0.03ドルという計算になります。これは机上の計算で、実測値ではありません。

まとめ|今日やる3つ

  1. 今日:3つの SDK のうち1つを選び、公式クイックスタートのとおりに道具1つだけのエージェントを動かす。pip install openai-agents、uv add claude-agent-sdk、pip install google-adk のどれかで始まります。
  2. 今週:権限・承認・ログ・費用上限・評価の5点を1枚に書き、設定に落とす。自動実行させる道具を名前で列挙し、最大反復回数と1タスクの上限額を決めます。
  3. 今月:外とのつなぎ方を決める。データと道具は MCP、他社のエージェントは A2A。自社で完結するなら A2A は後回しにできます。料金は月単位で動くので、稟議の前に各社の公式料金ページで当日の値を確認してください。

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参考・出典

いずれも2026年9月27日に取得しました。

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※ 本記事の情報は2026年9月時点のものです。サービスの料金・仕様は変更される可能性があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。

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